airアイコン 艦 −ふね−

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−−『宇宙戦艦ヤマト2』第21話より
お題 No.49

   
ふね】   

 土星の輪の中での圧倒的不利からの逆転劇を、追いついたヤマトを中心とする
艦隊は、敬意を持って見送っていた。激戦の空域を、交差する二つの艦隊――。
その後ろから、突如ワープアウトしてくる白色彗星に、最初に気づいたのは太田
だった。
「あれを、あれを――」
操縦桿に取り付いた島が、必死でヤマトを立て直そうとするも虚しく、艦隊は
その帯に巻き込まれ、艦隊を組んでいた戦隊はなす術もなく引き込まれていく。
あろうことか重力に引かれ落ちていく味方艦の激突を受け、ヤマトは炎上した。


 矢継ぎ早に指示を出し、あとは彼らの命がけの作業を待つだけ――頼むぞ
真田さん、徳川さん、ヤマトを救ってくれ――。
頼む、がんばれヤマトよ――。
古代進は瞑目する。地球は――しかしその前にこのヤマトの命をまず祈った。
 ヤマト無しには勝てない…テレザートと、テレサの命を奪ったあの星には。
それを目の当たりにし、その脅威を身を持って知っているのはわれわれだけだ。
何に代えても、守らなければならないもの。だが、ヤマトよ……。
俺たちの命。がんばってくれ――。
 祈るような気持ちで古代は艦橋そこに立ち尽くした。

ふと艦橋の窓から見上げると、コスモタイガーがそれを取り巻いているのが
見えた。
(……あいつら、何やってるんだ!)
カッとした怒りが涌く。
――危ないだろうがっ! 戦闘機隊長、なにやってるんだ!
「バカ! 早く行け! 加藤、早く避難させろ!」
怒鳴る声にかぶさるように、
「イヤです! ヤマトを見捨てるわけにはいきません!」
普段はタメ口のくせに、こういう時だけ俺は艦長代理で、あいつは戦闘機隊長
だ。ちくしょう、隊長が隊長なら、部下も部下だ――お前が去らないとやつら
も巻き込むじゃないか。
諦めて副官の山本を呼び出す。
「山本! 早く皆を連れて安全なところへ避難してくれ、早く!」
「イヤです!」
 ダメですでも、できませんでもない。「イヤ」だと山本明は言った。
声が微かに涙を帯びている、泣いているのか? お前等、そんなにヤマトが
大事か!? 
(危ないんだぞ――爆発したら、俺たちだけでは済まない――)

 ヤマトを生かすために、当然のように炎の中、自身の安全など脇に置いて
作業を続ける徳川機関長と真田技術長。その部下たちも同様――退艦の指揮は
南部と島が執った。
艦長代理は――艦の責任者が艦と運命を共にするのは、よほどの場合でない
限り、当然のこと。
格好付けでも、いきがるわけでも、もちろん死に急ぐわけでもない。
俺は――古代進は今、ヤマトとともにある――まだ、ヤマトは生きている。

 
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