title 2199
−ガミラス本星での死闘−

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【YAMATO2199 ガミラス本星での死闘】

−−A.D.2200 宇宙戦艦ヤマト
――第22話、第23話「神よガミラスのために泣け」より
:NOVEL「YAMATO2199〜鮮やかな光芒」(Original)


(A)

 がくん、と艦隊の揺れが始まった。
「引っ張られていねぇ?」「あぁ、そんな感じだ」
 宮本、横森、木村は揺れ始めた部屋の中でそう言ってまた無意識に天井を
眺めた。重力のままに引きずられて惑星表面に引っ張り込まれる――何度目
だよいったい。
だが有効な戦艦の捕獲方法であることは確かだ。
(島、頼むぞ――)
ヤマトの腹の中にいる俺たちは、戦艦頼み、というしか方法がない。

 出撃――はなさそうだ、と通路に出、宇宙そとを見る。
「おい、見ろよ」
惑星表面が近づいたと見るまに、そこに大きく開いた穴へ吸い込まれていく。
「ひょえぇ、表面ぼこぼこだぜ」
「岩盤脆そう――大丈夫かな」
「そんなこと……」言ってる場合じゃないぜ、と思った途端に、また衝撃が襲
って、今度は立っていた者たちも全員が床や壁に叩きつけられた。

 激しい揺れに横転しながらも、ヤマトは急速にガミラス星の地底へ引きずり
込まれていく。


 戦闘機乗りは戦闘機に乗ってこその存在で、飛べないとなればそれは役立
たずと同義。いま、このヤマトに居る中で、一番そのことが堪えている。
だがこの、ただ一隻で強大な敵ガミラスに挑んできた艦に乗り、その不遇さに
慣れても来た頃。いざという時のために、気力と精神力を貯めておくのもまた
技術、そう思う。
 だが。
 理性でわかり、待機をしてはいても。――感情や矜持はそれを許してくれな
い。
がくん、がくんと揺れ続け、砲撃であちこちから火の手が上がる中、やはり部
屋でじっとしていろというわけにはいかない。
 「隊長――」
宮本、横森、木村は、走り出た加藤を見て、その後姿に声をかけた。が、
「待ってろ」と言い捨てただけで加藤は前方へ駆けていく。

 通路に飛び出し、第一艦橋へ向かおうとした加藤三郎は、砲術長・南部康雄
とすれ違おうとした。
「南部――」
加えられ始めた攻撃には、砲術班が対応する。艦橋からの指揮だけでは間に
合わず、第一主砲へ向かおうとしているのは明らかだった。
邪魔だとは思う、だがつい声をかけてしまったのは無意識だ。
 “何か手伝おうか――”
そんなこと言わない程度には素人ではない。
戦闘はデータのやり取りとリレーション、それから各人の腕前。
いくら艦載機隊が、技術として敵を撃ち落すものを持っていたとしても。
戦闘のプロじゃない者が1人でも周りをうろついていれば、それは足を引っ張
る以外のなにものでもない。――と、加藤も当然わかっていたし、南部がそれ
を読み取っていることも加藤は理解していた。
学生時代から常に、トップで席を並べてきた、同期。――冷静で、計算ので
きる、何考えてるかわかりにくい男、南部康雄。
だが。
今ならわかる――同じ、班を統べる班長同士として。ギリギリの中で戦闘しな
ければならない、戦艦乗りとして。
 南部が足を止めたのは一瞬だった。
「――そのうち減りますから。…そうしたら、手伝ってください」
そう、無表情のままいい置くと、きびすを返し砲塔へ去っていった。

 『――減りますから』
爆撃を受けて被弾して――砲が撃てなくなる者。体を吹き飛ばされ、または死
亡して。直接爆撃の対象になるだけに、攻めつつ場所を移動できる艦載機と異
なり、その場に居て、浴びれば一環の終わりという砲術は、ただ座して死なな
いためには相手を撃ち貫くしかないのだ。
だがすでに。
戦闘のたびに戻れば減っていた――目を失ない、腕を吹き飛ばされ、わき腹
に破片を食い込ませて……。命まで時には失って。
俺たちは。
被弾したり事故れば、戻ってくることすらないから――機体ごといなくなっ
て消えるだけだから。……むしろ生きて地獄をさまよう連中の方を残酷だと
思えてしまうが。
南部の言いように動けなくなったのは、ただ一瞬。
誰もが。それを覚悟して、ここにいるのだ。
それに、消火と、負傷者の搬出か――医務室への。加藤はきびすを返した。
 ガミラスの執拗な攻撃は、本星として必死のはずだ。それは当然のことでは
あるが、それを思いやっているような余裕はヤマトにはない。
敵を滅ぼしてまでも――地球が生き残ることを選ぶなら。
 それを考えている余裕も、迷っている時間ときも無かった。
選んでしまった――すでに選ばされてしまった道を。生き延びるだけだ。
ただひたすら。厚い装甲を頼りに、時間との戦い、直撃を避けるための、島の
超人的な集中力と技術でかろうじて直撃弾を避けながら、強酸の海、濃硫酸
の嵐の中を…自身、ぼろぼろになりながら飛んだ。

 
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