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【このいのちして】

−−百之御題 No.90「信頼」
ガミラス帝星暦5088年
(地球キリスト暦 A.D.2200年3月19日)



親愛にして、我が最も気にかけし妹へ


アネッサ。
お前がこの書簡を目にすることはあるまい。
しかし、私はあえてこれを書き記す。
幾度もの戦いに勝利し、数々の勲章を授かり、
栄えあるガミラスの武将として、デスラー総統閣下にした私だが、
今回は帰れそうもない。
私は、おそらく死ぬであろう。


おそれ多くも、デスラー総統閣下よりヤマト討伐を命ぜられ、
私はバラン基地に赴き、ヤマトともすでに遭遇した。
アネッサ。
ヤマトという艦には、すばらしい指揮官がいる。
地球人は蛮族で、虫けらと変わりないと考えていた我々だが、それは違う。
自分の部下に迎えたいと思うほどの賢明な指揮官なのだ。
それに比べて、我が方の部下たちの不甲斐なさを嘆かずにはいられない。
デスラー閣下の信頼をよいことに、
その栄光を笠に着ただけの能無しが、
我が物顔に指揮官として司令職についていたのだ。
残念だが、この部隊は腐っている。
ここまで無敗であったのは、偶然に過ぎないと思われる。

バラン星での作戦は完璧であった。
私の指揮を邪魔することなく人工太陽を落下させていたなら、
あの時点でヤマトは叩けたはずである。
ヤマトをガミラス本星に近づけてはならない。
どんな手段を使っても、ヤマトを潰しておかねばならなかったのだ。
しかし―――
デスラー閣下は、我が作戦を止めた。

閣下はゲールにそそのかされたのだ。
バラン基地が重要基点なのはわかる。
しかし、ヤマトを葬らない限り、地球攻略は難しい。
なぜゲールの進言を鵜呑みにし、
なぜ我が作戦を止めたのか。
私には理解できないが、質問する立場にもない。

閣下の側で、誠に忠誠を誓う臣下が必要なのだ。
地位だけを求め、権力を欲する輩を閣下に近づけるべきではない。
閣下には民族の存亡がかかっており、
閣下の存在そのものが民の希望であることを常にお考えいただき、
そのための戦いであり、侵略でなければならないのだ。

軍法会議で死刑判決を受けた私に、
閣下は今一度チャンスを与えてくださった。
もう後は無い。
このドメルこそ、デスラー総統配下一の忠臣であると示すことになろう。
七色星団での決戦が近づいている。
たとえ刺し違えることになろうとも、私はヤマトをガミラスへは行かせぬ。
もしヤマトが私を倒したならば、
ガミラスも閣下も間違いなく苦境に立つことになる。
私はこの命を捧げて、閣下に真の忠誠をお見せし、
愚臣どもの甘言から目を醒ましていただくつもりだ。


アネッサ。
もしできるなら、閣下をお支えしてさしあげてほしい。
常に閣下を敬ってきた我が一族の者として、
私に代わり、お側に仕えてほしい。
お前なら安心して任せられると、兄は思っている。

悲しむには及ばない。
私は誇り高く、ガミラスの勇者としてこの名を残すであろう。
年老いた両親と、
そしてなにより、デスラー総統閣下を頼む。

閣下ご生誕記念の今宵、
我がガミラスとデスラー総統閣下の上に
栄光が限りなくあらんことを祈る


 
◆2006/04/19−−初稿◆

           あまりにも短いでしょうか。
           ドメルの気持ちは、この手紙で明らかでしょう。
           彼が、あの自爆スイッチを押した時、不敵な笑みを浮かべていたことを
           私たちは知っています。
           けれども、遺された人はどう思ったのでしょうか。

           この手紙がいつ、どこでどうなったのかは、読んだ皆さんに
           お考えいただこうかと考えました。
           デスラーは、アネッサは、この手紙と関わったのでしょうか。
           どの時代に、誰の手に渡ったのか。あるいは渡らなかったのか。

           紗月の居る三日月ワールドでは、手紙は不思議な運命を辿ります。
           お読みになりたい方だけ、続きはこちらです。
−−2006/05/12


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