気になる女
古代くん、若いっ! …とまぁ、そういうお話でした。 「古代と雪ファンのための100のお題」といっても、2人が恋愛問題とか互いの 気持ちで逡巡したのは、(普通の意味では)第一航海だけ、だろうと思っています。 普通のカップルじゃない。共に戦い、共に人の命と屍を踏みしだき、異民族を滅し そうやって生き延びてきた2人。それはまた、仲間たちや地球の人たちからも “希望”として“生かされてきた”という宿命も負っています。 ユキの強さは、それを知りながらも、個としての幸せを捨てず、重荷とせずに 生きようとしたことだろうと思います。だから、それは単に“地球一のオトコ” (とまぁ敢えて言っておきますが)が自分に惚れてくれて、戻ってくれば自分だけ を見ていてくれる幸せ、とは違うはずなんです。 第一航海で描かれるユキは、それはもうもちろん30年前ということはありますが 自立した、そして自分の立場から男どもを支える強い女性でした。 まだ18歳の少女。しかし看護師としてすでに現場で社会人経験も持っていた彼女 は、士官学校のエリートとはいえ、訓練学校の寄宿舎生活から直接ヤマトへやっ てきた古代たちに比べれば、きっとずっと大人だったことでしょう。 もちろん、そんな中に、少女らしい憧れや夢や希望や……潔癖さ、使命感などを 持っていた。 恋をした時に感情が暴走する経験は、誰しも持っていると思います。 自分の感情が自分で制御できない。思っても勝手に血が滾るような思い。 古代も島も、若くしてリーダーになったほどの人間ですから、大義の前に私情を 抑制できる精神力はきちんと持ち合わせていたと思います。 冷静な判断力と、熱い心。それが彼らの魅力だと思うのです。 ところが。頭で考えている間は良い−−気づくのは、いつも突然。 【嫉妬】というのは、人として最も醜い感情の一つだと思いますが、また最も正直 な感情でもあるはず。 それを介した時に、進はユキに対する自分の気持ちをハッキリ自覚したのだと。 ……それを表に出さない毅さが古代の魅力でもありますが (けっして、不器用 だからとか、恋愛オンチだから口に出さなかったわけではないと私は解釈して いる)、それでも、気づいてしまった。そしてその感情は、「好き」や憧れでは収 まらない。「誰にもやらない」であり、「自分のものにしたい」であり、ひいては、 だからこその「愛してる」だったんじゃないか……そう思った時に、この“お題”が すんなり出来上がりました。 この物語は実は(文中にも出てきますが)、NOVEL の『YAMATO2199−鮮や かな光芒』第二部 「バラン星を過ぎて」 と、深く関連しています。 艦載機隊と古代の話ですが、よろしければ、そちらもお読みください。 しかし艦内ではすでに(一部を除き)“ほぼ公認”の古代と森ですが、本人たち まだ「告白していない」「するべきでない」という時期だというのは、正しいようで。 また、古代が艦長代理に就任したあたりの、島との反目や、艦内での派閥抗争 らしき雰囲気は、もともとの52話設定の段階で、それらしきものがあった、という ことをベースにしたものです。実際にそういうことがどこかであったろう、ということ は主人公が複数(あれ? 島って主役だっけ・笑)立てられたことで想像はつくの ですが、時期として考えられる場面てそう多くはないですからね。 そんなわけで、ちょちNOVELっぽい部分もあり、短編としての出来はいま一つ 良いとは言い難い作品ですが、ぜひ一度書いておきたい部分でもありました。 ともあれ、こんな古代進像はお嫌いな方もいらっしゃるかもしれませんし。 若い彼の蛮勇というか、“らしさ”というか。そういうのが私は好きです。 ではまたどこかでお会いできましたら、幸いです。 そういえば、この話。「古代進とユキの100」題、完成50本目記念作品(って 自分で勝手に記念してるだけだけど)だったりします。祝って祝って(*^_^*)♪ ではでは。 綾乃・拝 ――8 Mar, 2008 あとがき記す/14 Sep 修正
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