air icon 信頼

CHAPTER-10  (091) (066) (023) (039) (007) (032)


39. 【信じてる】
オリジナル・キャラクターが絡みますので、苦手な方はパスされてください。
ここに登場する 古河大地 は、イスカンダル帰還後に参加したコスモタイガー隊員で、
当艦ではのちの時代まで活躍するキャラクターです
詳細は、三日月小箱 NOVEL「宙駆ける魚・2」 をお読みいただければと思います

また、この話は、 ・・・お題100−No.23「絶対反対!」 の続き(=翌朝)のエピソードです。

(1)


 「はい、ではお世話になりましたっ」
「おう、またな」
「ほいよ。次は10日後か?」「あぁ。よろしく」
 古代進と相原義一が乗艦するヤマトを見送って、俺たちも戻ることにした。
 そういえば相原通信士とも今朝初めてお会いした。やっぱり柔らかな印象の人で、
背は高いけどなんだかカワイイ感じ、ヤマトの人って噂とぜんぜん違うんだなぁ、なん
て言ってたら山本司令に「見かけに騙されてっと偉い目に遭うぞ、特に相原はな」と
言われたけど−−。
 俺たちもひるまでには第二基地に戻らなければならない。 今回はまぁゆっくりできた方
なのは、ヤマトが来たからだろうな。
 初めて見るヤマトの本体は物凄く感動もので、さすがに近づけなかったが、俺と同
じように朝から眺めに行ったやつはけっこう居た。
「乗りて〜なぁ」とため息をついていた川崎の気持ちもよくわかる。
俺だって。
――廃艦の噂がある、なんて本当だろうか? 地球の連中は何考えてんだっ!?


 「古河、お前ぇ、昨日、どうしてた」
え? 格納庫へ向かいながら山本司令にそういわれて、えっ、と動揺する自分。
い、いやべつに深い意味があってのことじゃない、よね? ……。
「は、はい。加藤隊長のゲストルームに…」
沈黙が返ったので、思わず顔色を盗み見てしまうと、何を考えているのかは読めなかった。
「本当か?」
「え、ど、どういう意味でしょう…」
ふっと山本さんは笑った。
「おめーの今の科白が語るに落ちてるな」
口の端をちょいとゆがめて笑う様子は、ちょっと外人ぽい。
ちゃんとゲストルームに寝たか、ってことだ、なんてぼそっと言うし。
 ぽん、と肩を叩かれてびくっとしたのは、……やっぱ俺。どっか疚しいところあるん
だろうか? 加藤さんとは合意だったし、べべつに山本さんに悪いことしたわけじゃ…。
 「司令こそ、昨日はどうされてたんですか? 宿舎、戻られなかったんでしょ?」
――蛇の道は蛇。朝のうちに調べておいたのだ……まぁ副官みたいな仕事をしている
自分にとって、上官の居所もわからないのは、ちょいとマズいことは確かで。
朝になって気づいて慌てたことも確か。……さすがに(隊長と)一緒に出勤するわけ
にはいかなかったから先に出た、ということもある。加藤隊長は
「飯くらい食ってけよ。男所帯だけど、朝飯くらいはいつも作ってるからな」
そう言ってくれた。――彼が案外マメだってのは知ってる。皆の飲み会なんかだと隊長
自らつまみとかも作るんだそうで、部屋もけっこうきれいだったしな。う〜ん。
……あんなことやこんなこと…のあと、一緒に朝飯ってのもけっこう艶っぽくて困るん
だけど。腹減ってたし……食欲に負けて。

「なぁにテレてんだよ、今さら。そ〜いう時そ〜なるのは人ならあたりめーだろ? な
んだったら山本がそ〜いうときどーだかおしえてやろーか?」
そそくさと食ってる俺に、加藤隊長はそう言った。
 俺は、合成珈琲を吹きそうになった。
 なっ! …やややめてくださいよ。山本さん、て名が出た途端、頭に血が上って赤く
なる。加藤隊長は、ばはは、と笑うと。
「ま〜ったく。からかいがいのあるやつだな」
そう言ってまた。俺の顔を見てくしゃ、と笑った。
――なんだか後引きそうだった。
次、どんな顔してこの人に会ったらいいかわかんなくなりそうだ。それに……佐々さん
にまともに顔合わせられない気もして。
 俺。ダメなやつ…。

 そんなわけで、後片付けもしないで済まないと思ったが早々に部屋を辞したのはまだ
早い時間だったと思う。「山本によろしくな」隊長はさすがに俺がなんで早く出たがって
いたかわかっていたようで、あっさりと送り出してくれた。




 「俺が夜、どこでどうしようと、お前の知ったこっちゃねー」

山本が動揺したのかどうかはその口調からはわからない。
たった四つかそこいらしか違わないってのに、何枚も上手。悔しい感じだ。
「そんなわけにいきませんっ。もしものことがあったら、どうすんですかっ」
俺の責任になります、なんて言ったあと、しまった、と思ったが遅かった。
「――どうせ、何かあっても動けやしなかっただろ? 生意気言うんじゃねーよ」
それは怒っているというよりは、呆れているといった風情だ。
――もしかして、山本さん、全部わかっていたりなんかするんだろうか? 
内心、焦る。

 でも、本当にどうしていたんだろう?
まさか、古代さんと? 
……佐々さんだったりなんかしたのなら……殴ってやるっ。
気合を込めたのがわかったはずはないのに「佐々と一緒だったかって?」
その途端、振り向いた山本さんは――あ、これはからかうつもりだ。
「そ、そんなこと」言ってませんっ。
顔が赤くなったのが自分でもわかったが、そっち方面へ誤魔化せるのなら、この際
歓迎すべきことである。
「――あぁ、いつものよーに、佐々口説いてたっていったら?」
かっとして、思わず睨み上げると、はっは、と彼は笑って。
「うそうそ。そんなことして殴られるほど、俺はあいつと浅い付き合いじゃねーよ」
夕飯まで一緒だったのは確かだったけどな。ふふん、と意地悪く笑う。

 昨日からの加藤隊長や古代艦長代理と山本さんとの関係で頭がいっぱいで。
そういえば、だったけど。この人と佐々さんも怪しいなんてものじゃないんだっけ。
――そういう意味でいえば、佐々さんと怪しくない人なんていないけど。
宮本副長だってそうだし、同期の連中だって狙ってるしなぁ。片岡司令だってわかん
ねーぞ。奥さま亡くされてお一人だし、ヤマトの前からの付き合いだっていうしなぁ
、、、そういう意味では、今いるメンバーの中でも、佐々さんて“月基地の主”みた
いな処があるんだ。――なんたって、“ヤマト以前”からだもん。

 「古代さんと、ご一緒でしたか?――」
俺は思わず訊いてしまった。
言ってから慌てた。おいっ、いったい何、言ってんだ、俺の、莫迦野郎っ!
え、と固まったのがわかった。ゆるりとだがその一瞬の緊張は解けて。
「――古代、か……あぁ。そうだな」
肯定とも、否定とも、取れた。
 「……ヤマトに会いに、行ってたよ」
ドッグにいたヤマトの中に。
古代艦長代理はその士官室に泊まったのかもしれない。出航前夜――あの人が噂どお
りの人なら、それもあり得るかもと思った。
その中で、古代さんと一緒だったかどうかはわからない。
言いはしないだろう、と思った。



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