air icon 幸運の神ラッキー

CHAPTER-07 (017) (011) (092) (052) (042) (077: 1 /2 /3 /4 /5 /6)
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 艦載機戦から艦隊戦への移行――その物凄さを目の前に、いや艦の中にいて
実感して、いまこの艦はどんな状態を想定して走っているのだろう? そう思いな
がらただひたすらにパネルを凝視し、艦内を把握し――「こらぁっ。B隊はいま戻っ
たばかりだっ、右翼はD隊だぞ、しっかりしろぉっ」
また怒鳴られた。――眞南さんも怒鳴ったりするんだなぁ。
 そんな中、艦橋の中央にどっかり座るか、時折は立ったままサブパネルで戦況
を凝視したままの古代艦長はあまり口を挟むことはない。
ただ時折、艦載機隊の「Fire!」と、主砲の発射時、それと艦の方向を決める時
にだけ声を発する。
全体の動きを、不思議なことに通信士の相原さん――戦闘班長・南部さん――そ
してコ・オペレーション席にいる佐々さん(とその伝声管の向こうにいるらしい宮本
さん――その三角形で決められていくようにも見えた。

 『――風間ぁっ、そこいるの、風間だろ?』
目の前が鳴って、「どうした!?」と訊くと、
『第二砲塔、暴走だ――原因、究明中。救援、頼む』
篠原だった。必死な声がする。
 む、と振り返った古代進が「南部――榊原。結城を呼んで行かせろ」。
「私も」榊原が言うと、「いや、南部が行け。――ここは風間」
じっと一瞬。この艦に乗ってから初めて古代進に正面から見据えられた。
「お前がやれ……南部の代わり、戦闘班長だ。やれるな」
え。な、なにを急に……できんのか? 自分。
「は、はい――」風間巳希としては、そう答えるしかなかった。
 「総員、戦闘配備。――第二砲塔、不具合にて、フォーメーションFよりF’エフダッシュ
作戦変更。各人、迅速に対応せよっ」風間は咄嗟に言っていた。
声が震えなかっただろうか? 何も言わず、古代は前を見たところをみると、これ
でよかったのだろうか。
相原さんとふと目が合うと、少し笑って、親指を立ててみせてくれた。

 さらに過酷な4時間が過ぎ――艦は、平静を取り戻したかにみえた。


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 「か〜っ! いくらなんでもキツすぎだって」
「うっわ、俺、もうだめ」「……」
食堂に飯を食いに来たはいいが、ほとんどの者が受け付けられず、食い物を前
に睨みつけているかギブアップ気味。中には床に座り込んで茶を飲んでいるだけ
の者もいる。
 新人、新参――この艦に慣れない者たちはそこに座り込んで、疲労困憊した
顔を寄せ合った。
食事をとったはいいが、少し口に運ぶのが精一杯。さすがに吐くようなヤツはい
ないが、それでも食が進むとはいいがたい。
 「なにをやっとるか〜! とっとと飯食え。食えない者は無理してでもだ。まだ
これから上陸作戦が待ってるんだぞ!」
ざっざっと数人が食堂に入ってくる。豊橋大尉を中心に、榊原、そして見かけな
い背の高い士官――制服からすれば候補生。ただし、ものっすごい美形だ。
俺は男にそういう感想を持つ趣味はないが、食堂にいた女ども――戦闘員も含
めてだ――が、一斉にぽおっと見惚れたくらいだからあながち俺の感想も間違っ
ちゃいないだろう。
すらりとした体躯に少し褐色がかった肌。髪は漆黒の黒に光る眼差し――若い、
異国風の顔立ち。
 「サージャ、こっちへ」
隅から呼ぶ人があって、3人ともがそちらへ向かった。
俺たちがぼぉっと見ていると。
「とっとと食えよ。食わないともたないぞ」
通り過ぎ様、榊原が言い、俺たちは顔を見合わせると、ちくしょう、と唇を噛むよ
うな気持ちで目の前の食事に手をつけ、喰らいついた。
――この上、上陸作戦かよ!?
(死人が出るぞ――)
真面目にそう思った風間である。

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