air icon 幸運の神ラッキー

CHAPTER-07 (017) (011) (092) (052) (042) (077: 1/ 2 /3 /4 /5 /6)



No.77 【ラッキー】
 
= まえがき のようなもの(ご注意含)=
『宇宙戦艦ヤマト・完結編のち』−−というのがこのchapter07後半の3本です。
この「古代進&森雪ファンのための100のお題」の中での、「女神」 という中篇の続きです。
バレンタインデー企画での二次小説の王道、つまり森秘書官を巡る恋のさやあて。
ただこの風間巳希というエリート士官くんは、一筋縄ではいかず、その後…。
というのを書いてくれ、というリクエストが多かった(^_^;)。
古代進に心服していく若き士官−−そりゃまぁ気持ちはわかりますが…。

ストーリーとしては完全にOriginalで、ヤマトは撃沈後ですので、
当然出てきません。南部、相原、といういつものメンバーも出ますが、
舞台は太陽系、戦闘も設定もすべてオリジナルです。
……イメージを壊されたくない、とかオリジナル・キャラが活躍するものは×
という方は、この先は絶対にお読みにならないでください(いつものごとく)。

それでもよろしい、という方のみ、どうぞ。
西暦2204年ごろ。古代進と森ユキはまだ結婚していません。
ただ、ラブラブの時期ですねぇ。古代くんはヤマトを降り、あちこちの細かくて
大変な仕事でキャリアを積みつつ、だんだんに外周艦隊を組むメインチームが
できあがっていく時期です。
さて、新人くんの運命や如何に−−。




flower clip

= 序章 =
 ち、くしょう……な、んで俺が。こんなところで、こんな目に
遭わないといけないんだよ――。
 腕が痛い。いくらGが軽いとはいっても、氷雪の嵐吹きすさぶ中、岩壁に取り付き、
それを銃器を持って越えようとというのだ。
おまけにこの簡易宇宙服――さらに装備。動きにくいったらない。
……額に汗が滝のように流れて、体の中が自分の蒸気で蒸れようと、バイザーを下ろした
上から汗をぬぐうこともできなかった。
(……き、しょうっ。だいたい、こんな、仕事――自分の じゃないって)
半分泣きそうになりながら、筋肉痛で思うように動かない体をずり上げるようにして
手で引き上げる。片方の手がすでに感覚をなくし、痺れ始めていた。
 (あっ――落ちるっ)
ふっと意識が遠のきそうになって、慌てて一方の命綱を巻き取ろう
としたところを、上からがっしりした手が押さえた。
『――しっかり、しろ。自分の体くらい、引き上げられなくてどうするっ』
インカムから涼しげな声に弄られて、追い討ちに『下、見ろ――お前が落ちたら下は死ぬぞ』
ぞっとして首だけ曲げて見ると、その下から何人もが連なってその岩壁を登ってきていた。
 『――お前は、指揮官だ。その、役割を果たせ――』
岩の上まで引き上げたあと、四肢を付いている自分を見捨てて、その人はさっさと
平らな場所を向こうへ行ってしまった。
(ち、くしょう……)
つくづく体力が追いつかないのが情けない。……あんな。あんなヤツに負けるなんて。

 風間己希かざま みき准尉。
訓練学校首席で卒業後、本部勤務のエリート士官――ただいま、
土星基地にて、研修訓練中――。
その鬼の艦長でありリーダーの名を、古代進――艦隊司令にして
本部参謀補少佐である。


moon icon

= 1 =

 「へぇ、お前ラッキーだなぁ。古代艦長じきじきの抜擢か?」
「いいよなぁエリートさんは。本部勤務、速攻で土星研修、ときた」
仲間や先輩に本気とからかいの混じった科白を浴びせられ、事情を知っている一部からは
「おい、森さんにちょっかいかけたりするからだよ。生きて帰れることを祈ってるぜ?」
というありがたくない推察をいただいて風間己希は、戦々恐々、数名の今年入隊の仲間や
先任たちとともにその隊へやってきた。

 「艦長、古代だ――この艦は初めての者もいるだろうから、出航前に特別訓練が組み込ま
れた。ありがたく感謝して、各人努力せよ!」
甲板に並び、その一段高い処に立って艦長のお言葉。両脇に副長と参謀(だろうたぶん)が
並び、一人は古代と同じくらいに若く、もう一人はベテランの様子だった。
 その一人が口を開く。
まっすぐにそれを見つめる目、目、目……期待に満ちたものもあれば、自信にあふれたもの
もある。風間にもう少し余裕があれば、その幾らかが笑いを含んでいたのを見つけたかもし
れなかった。
 「研修期間は10日。そののちすぐにガニメデ宙域へ出航する。最後の3日は実戦に即した
訓練を行なうからな。新人は早くこの艦のルールに慣れ艦の一員として機能するべく努力し、
ベテランはよく導くように。――この艦は戦艦として先行するからな、命を惜しみ労を惜しまず
精進せよ。以上だ」
「アイ・アイ・サー」――はるか昔の海軍風の返事が返って、ざ、と敬礼をする一同。
 軽く答礼した古代艦長に続き幹部乗組員は踵を返す。
「解散っ。各自10分以内に部署に着け」

 それを見送りながら……「なぁ。すごいメンツだな、今回」
一緒に本部から転属になった篠原が風間の背を突いて言った。「なにがだよ」
こそこそ話は嫌いだ。篠原は体力男で何故本部に直接採用になったのか風間的にはかなり
ギモンな同期生だ。もともと戦艦乗り志望だったのだから今回の抜擢は喜んで飛んできた口。
風間にはよくわからない男である。
 「――副長の眞南さんは知ってるだろ? 横にいたの宮本隊長だぜ? あと、相原さんだ
ろ、南部さんだろ。――南部さん乗るのってめっちゃ珍しいんだぜ、本部の戦闘参謀だから。
お前、顔見たことあるか?」
もちろん、なまは無いが、顔くらい知らないでエリートなんぞやってられるか。 お前さんとは違う
んだよ、というのが風間の内心の声。
 「お前ら、何ぐずぐずしているっ! 第一分隊はこっちだ」
「は、はいっ」驚いた篠原は、
「お前、第二砲塔だろう。さっさと行って席に着け」
いきなり目の前に指を突きつけられて、その相手にさらに驚いた。小柄でやけに迫力のある
女性が腕を腰に当てて鋭い声で言ったからだ。
(さ、佐々大尉――このひとも一緒か!?)
「風間っ」「は、はい…」「指揮官補だな――宮本隊長っ」
 「おう」
天井から声がしたような気がしたが、するりとイヤにハンサムな背の高い男がサイド通路から
飛び降りた。
「風間の配置は?」
「最初は戦闘班長んとこだ――艦載機隊の出番はまだ先だろうからな」
(いっ)
 風間は内心、引き攣った。
――自慢じゃないが、艦載機は大の苦手だ。座学ではトップだったしシミュレーションでは
まぁまぁの成績を上げたが、実際に乗ろうとも思わず乗る機会もなるべく最低限で、と済ま
せてきたのである。大きなもの――高速艇や中型機ならいざ知らず、あんなもので敵中へ
突っ込んでいくなんて冗談じゃない。
 「安心しろ」呆れたというような顔で内心が読めたような宮本の声が被った。
「お前さんに大事なコスモタイガー乗ってもらおうなんざ思っちゃいねーさ。指揮官なら指揮
官らしい仕事の仕方ってものを教えろ、って古代からよ〜〜っく頼まれてるからな」
ふふん、と意地悪く言うのに、ますます、ぎくっと思った風間である。
 「ともかく早く準備を。南部んとこへ行け――よく見て覚えろよ」
とはいえ、南部の戦闘指揮が実戦経験のない新人に「“見て”追いつくようなものかどうか
わからんけどな」という科白が続いて――あれ、これは莫迦にされてるのかな? と思った
時には2人の姿はなかった。

 「おい、風間。しっかり頼むよ――俺たちお前の指揮次第じゃあぶねーことになるんだか
らな」 心細そうに篠原が言うのに、
「だ、大丈夫さ――これでも成績優秀だったんだから」
あくまでも、ペーパーやシミュの上では、だけど。




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