【君を見つめる10の御題】より

      air icon 君には代わりがいるのでしょう。


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 「君には代わりがいるのでしょう。」

 はぁ? といきなりの言葉を投げつけられて頭の上に大きなクエスチョンが沸く。
それよりも何よりも、何故、どうして私がそんなこと言われなきゃならないのさっ。
……佐々葉子は、口に出すタイミングを失ったまま胸の中でそうつぶやくしかな
かった。
 それがまた、腹立たしい。
思いっきりそう言ってやればよかったのにっ。
…怒りの半ばは咄嗟に呆然としてしまった自分に向けられているのだ。

 だいったいっ!
 日本語がおかしいじゃないよっ!!

“君には”“代わりが”、というのなら、君には代わりがいる、つまり、あんたじゃな
くったって大丈夫だから、さっさと去りなさい。そういう意味だ。
彼が言いたいこと……それは語尾の「いるのでしょう。」とイヤミったらしく決めつけ
たニュアンスを優先すると、「(僕でなくとも、いくらでも代わりなど)、いるのでしょ
う」と、正確に伝えないと意味がない。
 だからっ!!!
 なによ、あの言い草はっ!!!!
「君には、代わりが、いるのでしょう、だってっ。」
ぷんすか怒っている葉子には、周りがあまり見えていない。
いるわよ、いますとも。あたしじゃなくっても誰だって代わりにすればいいじゃな
いのよっ。最初っから頼んでなんかいないんだからっ。
お前が勝手にウロつきまわってただけじゃないっ。
――その様子を加藤四郎あたりが見たら、「まぁた葉子さん、何怒ってんだか。まっ
たくもう、カワイイんだから」と苦笑しつつ肩をすくめそうである。
 最後の1行はさすがに口の中から外へ零れることはなかったが、無言で言葉を投げ
つけ返してやれなかったことも、腹が立つ。

 ずんずん、と怒気を撒き散らしながら通路を突進している、という自覚は無い。
 すれ違う者たちが、その雰囲気に思わずそっと(行き過ぎてからだ、もちろん)
見返っているということも気付いていない。
――彼女が感情を露にすることは、わりあい珍しいのだ。もちろん、わりあい穏やか
な方である――というネコを、この赴任してきたばかりの月基地では(3枚くらいは)
かぶっている。

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 ふ、ふんっ。
 勢いに任せて来たはいいけど、いったい此処は、どこだ?
いつの間にか基地のまだよくわかっていない外れだか奥だかへ踏み入れていたらしい。
レッドゾーンではないから、葉子の資格でセキュリティ防壁に抵触するようなエリア
ではないのだろう。
 きょときょと、と周りを眺めてみても、どこだかよくわからなかった。
 まぁいいか。

 だいたい、付き合った覚えなどないのである。
食事に誘われて、特にそういう特別なアプローチがあったわけでもなかったので、何
度か一緒した。同じ部署に勤めているわけだし、外勤務の多い自分とは、そう毎日顔
を合わすわけではないのだし。どうして自分に興味を持ったのかはわからないが、戦
闘の知識もそこそこあったし文芸全般に詳しくて、映画の話や絵画・演劇・舞台芸術
など、葉子の親しい仲間たちとは出来ない話が出来て楽しかったから。誘われて何度
か映画に行ったり、オペラを鑑賞したりコンサートに行ったりした。――だってさ。
趣味傾向が同じヒトと行った方が楽しい。おしゃべりもより知的興奮を高めてくれる
し、食事のオードブルとしては最高だ。
――もちろん、恋人と行くのが一番楽しいけど……。
四郎とは「何処へ、何しに」行くか、じゃなくて四郎と一緒だから楽しいだけで、
映画にも演劇にも、彼がさほど興味を持たないことは自明だったりする。
(山本ならな……)
どっちも楽しかっただろうが。
 考えても詮方ない。

 通路に、虚空に向かって開いている透明の窓に向かい、ふぅ、とため息をついた。
……もはや昔日の面影を残してはいない基地だが。
だがこの基地は――まさしく、月基地には。
 あの頃、あの男たちが居たのだ。自分の、隣に。

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 「それって」
基地同僚の仲間たちに呆れられた。
「ね〜、佐々。それ、普通は男って“デートした”って思うんじゃないの?」
「え?」2人の同僚に両方から突っ込まれて佐々は少し驚く。
「――普通、友だちと行くでしょ、そういうの」彼女は答えた。
はぁ、と周りの方が呆れた。
 別にぶりっ子しているわけではないのである。
だいたい、芝居観たり映画に行ったりするのは1人のことが多い。友人といっても、
葉子の場合、男友だちの方が多いし、イコール戦友だったりもするので、もっ
と乱暴な仲間だったり家族くるみ付き合いだったりするわけだ。
――確かに、いくら仲が良いとはいっても、古代進と映画を観にいったりはしない。

 『デートったって、別に何かヤッた、とかいうわけじゃないでしょ。』
 旧友(というかほとんど悪友)の横田美香がそう言った。「だから別に彼氏気取りで
いても気にすることないんじゃないの」といわれて安心もしてたところだ。
――まぁ彼女よこたの場合、何か“ヤッ”ても、“お友だち”だったりする から、世間一般の
基準とはちょっと違うともいえるので、それがどれだけ信憑性のある男と女の距離感
なのかは、はなはだ疑問だが。

 (う〜ん……いちいち不自由だなぁ)
佐々は夕食後サロンでの同僚たちとの“ちょっと一杯”の雑談に、少し不機嫌な顔を
した。
 「佐々ってモテるって自覚ないからなぁ」1人が言い、
「そうよそうよ。それだけ美人で、気さくでね。しかも、地球の英雄!」
「大尉だしね」
「……そ、それは…」関係ないだろう、と思う。
 武官の地位の高さは、女性のモテる要素とは反対極にあるような気もするし。
地球の英雄(名称ごと迷惑だが)、だってそうだ。
確かに、年下の若い武官や下士官たち(男)が憧れても、まぁ仕方ないかなというの
は認めるが、自分そのものというよりも、そういうシチュエーションとか。地位とか。
そういうのに憧れているに過ぎない。
 あいつみたいに、大人で……佐々より3つか4つか年上だ、独身のエリート文官で。
性格的にも特にあざとい所も何も無い普通の、性格の悪くない男。
なんだってそんなのが、私に気があるなんて思うわけ?


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 あ。
ちょっとちょっと。
来たわよ。
 ざわっと、その席の女たちが囁いて佐々がその方を見ると。
(あい、つっ)
 ここで気まずく顔を逸らしたりはしないのが佐々葉子というものである。
最初はぼぉっと眺めるでもなく眺めていたのが、突然。
すい、と立ち上がると、ずいずい、っとカウンタで酒を注文しようとしていた男に近づき、
「おい、雑賀さいがっ!」と声をかけ、振り向いたところを胸倉をつかみあげた。
 慌てたのは同僚たちである。
「わっ」「佐々っ、だめ、暴力はっ」「待ちなさいよ〜」
慌てて女たちが止めに来なかったら、そのまま平手打ちくらい喰らわされていただろう。
「だめだったら……武官が文官殴ったら大問題っ」「佐々ぁ、大人になんなよ…」
わかったわよ、と手で振り払って、
「暴れないのよ」と(私は猛獣か!?)仲間たちがしぶしぶ席へ戻ったあと。
怒った顔をして睨み上げる葉子をその男――雑賀 美樹さいが よしきは少し眉を寄せて
見返している。
 「怒る権利は僕の方にあると思うんですけどね、違ったようだ」
柔らかな口調には皮肉が込められている。
「お連れの方には少し待っていただいて、一緒に座りませんか? 少し話した方がい
いんでしょ」
不承不承ながら目線で同僚たちに合図すると、雑賀は窓際の一角に席を取った。

 「貴方がどういうつもりなのか、わからなくなった」
ぷい、と無表情を追加するように、佐々はそう言って、雑賀の目を見るのをやめた。
ふだん一緒に遊んでいる時は、案外に表情豊かでかわいい人だなと思っていた矢先。
雑賀は少し後悔もしている。
「――ねぇ佐々さん。僕は、ハッキリ言わないといけなかったのかな」
「なにを」
「――僕は、貴方と付き合いたい。恋人候補にしてほしいってことを、です」
「……」
佐々は顔を上げた。
彼女たちにさんざ吹き込まれていなかったら驚いたかもしれなかった。
「『興味がある、一緒に楽しみたい』っていうのは、そう・・いう、意味?」
だったのか…。佐々は呆然とする気分でそれを聞いた。
「それ以外に意味があるとでも?」
 「友人になるきっかけだって、そんなものだろう?」
おやおや、と今度は雑賀が驚いた。何か言おうとしたら、佐々に先手を取られた。
 少し、聞いて。

 私には、戦友以外の友人、って居ないのよ。
女の子たちは別だけど――趣味を楽しんだり、映画を見たり。 そういう友人あいてって居ない。
……戦いの場以外での友人も居ても、いいのかな。そう思った。
それに。
「それに?」
雑賀は、少し固いながらも優しいとも言えなくも無い表情で佐々を見返した。
「――恋人は、居る」「ほぅ」
 「……結構、有名だと……思ってた」
最後の方は消え入るように。

 加藤四郎と佐々葉子の仲なんて、艦載機群や機動隊のメンバーには自明。
「…そんな噂は、あったかもしれませんね。でも現に、貴女は此処に、彼は、宇宙の
彼方だ」こくりと彼女は頷く。
もうじき彼が此処に赴任してくることなどほかの誰も知らないのだ。確かに長期の輸
送艦勤務。だがその先には――月基地司令補という地位が待っている。その時、私
は――どうするのだろう。
 「男はね」
雑賀はゆっくりと言葉を選んだ。
「気に入った女性が身近に居て、その人とどうにかなりたいと思っていたら。不利な
情報など無視してしまえるんですよ。それに……今、彼は此処にはいない。手に入
れてしまえば、自分のものだ――いや、彼と対等以上に戦えるからね」
「雑賀さん――」

 加藤四郎は佐々葉子より、階位は二つ上の中佐待遇(現在は少佐である)。ただし年
齢は四つ年下。恋人だった加藤三郎の実弟だからだ。雑賀美樹は佐々より三つ年上の、
基地文官。法律に強く、そういった部署に務めており、佐々との業務上の接点はほとんど
無い。
 だからといって、気持ちが変わるものでもないだろう――。
 それは女の側の、一方的な思い込みかもしれなかった。

 佐々はけっして貞淑だというわけではない――と自分でも思っている。だが、積極的
に相手を見繕って、より良い相手を探そう――そんな気分とも無縁である。
男が嫌いなわけでは――今は、無い。昔は確かに相当に男嫌いだったが、ヤマト以降、
男だから女だからということで相手を差別するのもなぁ、そう思うようになった。だから
必然的、“友人”というカテゴリでも男女を問わない。――少なくとも彼女の方では。
 23世紀、この大和民族も少しは恋愛についてタブーを緩和した…というか、中世以前
に戻っただけかもしれないが。恋人とBFとは厳格に区別されるべきである――人に
よっては。それに。いつ果てるかわからない、そして故郷にもいつ戻れるかもわからな
い星の海。いくらここが地球の至近距離――月だとはいっても。相手が宇宙の彼方、
という例もないではない。実際に佐々の恋人がそうであるように。

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 「それ、で? 気づかなかった僕が謝るべきだ、とでも?」
気の強さが表に出たような顔をして、佐々は雑賀を見た。
彼はほぉ、と思う。それを表に出したりはしなかったが……本音を見せてくれると綺
麗なんだな、この女性ひとは。最初から手の届かない ひと、捉えたようでまったくとらえど
ころがない。だが思い切って声をかけてみたら案外簡単に承知した、と思っていた。
もちろん、それがそのまま恋人候補、と認識してくれているとまではうぬぼれては、
いない。
 ただ時折、見せる笑顔や、怒った顔――本心がぽろりと漏れる表情を見ると、惚れ
ていると自覚する自分が居る。……いや、この人の恋人は、もっと様々な表情を向け
られるのだろう、そう思うと強烈なおすの意識が、底から突き上げて、そんな自分自身
に驚くのだ。
 「――いや」
雑賀はかすかに首を振った。「謝るより、考え直してもらえると、いいな」
 友人としてしか見なかったのなら、そうでない可能性を。

 だから男にとっての“友人”がさらに近しくなりたいための方便であり、女にとって
それ・・が(女にとっては都合のよい)本音だったとしても。 その違いを咎める権利は、
双方に無い。
 少しの間、所作が止まった。
その後、微かに彼女は首を振る。
「考えてみるまでもないことだ――」いつもの無表情に戻る。
だが。佐々はこれだけは話そうと思っている。振り回したり弄ぶつもりではなかった
のだから……それもまた、言い訳かもしれないが。
 「……一つだけ、知っておいてほしい」
まっすぐ雑賀を見た。その目はとても、綺麗だ。
 「“友人”……友というのは、私の中で、何よりも価値が高い――」
もしかしたら束の間の恋をする相手よりも。男として認められることよりも。場合に
よっては恋人よりも、かもしれない――。
佐々の中に、山本明の面影が浮かんだかもしれなかった。
 なるほど。
 その、“大切な友人”と“可能性の高くない恋の相手”と――どちらかを選べ、と。

 この娘はやはり魔女なのかもしれない。
 仲間たちにさんざ言われた――あの女は危ない。綺麗で無害な顔をしてるけど。
敵を前にすると平然と相手を撃ち殺す。炎の中で笑ってたらしいぜ。傍にいる男は
帰って来ないとも言うな――。
 だけど、艦載機を降り、普通に暮らしている分には、普通の、20代前半の、優しい
女性だろう? 彼はそう答え、また実際にそうなのだった。少し幼いくらいの。だが
頭が良くて感性が豊かで、手ごたえのある。
 「それに…」
佐々の声に雑賀は我に返った。
じっと見合ったままだったことに気づく。
「私のそばは、ヤバいんだ――」
すっとグラスをなぞって、その指先がガラステーブルの上に置いた雑賀の手に触れた。
柔らかく指をさする。初めて彼女が見せた、サインだった。
伏せた目がまた開いた。
 「傍にいると、死ぬ、ってこと?」
こくりと彼女は頷く。「――それ、本当かな。僕みたいに戦場に出ない人間には関係
ないと思うけど。それに…君の、恋人という人だって、生きてるだろ?」
微かに首を振った。
「――彼は……加藤は。死神が来たら撃ち殺しちゃいそうなヤツだから」微かに誇る
色が声に混じる。「だけど――大事だと思った人は、皆……」
 そうだろうか? と雑賀は思う。
「皆が知らないだけだよ。私しか、ね……」
そういう言葉には氷のような温度があった。

 少し離れた場所に戻って女の友人たちと言葉を交わしている佐々を、雑賀はその席
に座ったまま眺めた。柔らかい間接照明は、その視線をさえぎるほどヤボではない。
ある程度のほの暗さは酒場の必須だ――親密感と、プライヴァシーを守り、酒の味を
増す。
ゆっくりと疲れをほぐし、外の景色ほしぞらを生かしながら、明日への活力を育てる。
 カクテルビールとつまみを口に放り込みながら、さてどうしたものか、と彼は思う。
傷ついたプライドはもう修復しようとしていた。
あんな言葉を投げつけたのも、大人げなかったかな、とも思っている。
 遠くから見ているだけだった日がまた、戻ってくるのだろうか――いつか、飛んで
いってしまい、また戻らない時まで。
彼女はけっして自分を嫌ってはいない、という自負はいささかあった。
周りにいる爽やかで健康的で、または逞しく生命力に溢れた男たち。
だが彼女のある部分を、自分は共有でき、刺激できるのだろう、そう思っている。
 恋愛に長けているわけではない。ただ、「いいな」と思った時に、他の人たちのよ
うに躊躇しなかっただけだ。もはや20代後半、そろそろ落ち着きたいという気持ちが
無いではなかった。それに月の荒涼――緑も蒼い空もない場所。宇宙も星も好きだ
が、やはり潤いは欲しかったのだ。遊びとか恋愛ごっことはまた違うものが。

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 突然、ざわざわ、とその場全体がザワめいた。
驚いて入り口の方を見やると、その場だけが少し明るくなったような錯覚を、雑賀は
抱いた。その人が着ていた制服が明るい色だったこともあっただろう。さほど大柄で
もない、だが明るい目をした姿が現れ、ザワつく視線を縫ってまっすぐ佐々たちのテ
ーブルへ歩み寄った。
「やぁ、ここにいたのか――あっちのサロンに来ればいいのに」
 3人の女性たちが一斉に立ち上がって、さっと敬礼した。――相手は、そうされる
べき立場の人間だったからだ。
 だがその彼を見た瞬間の佐々の表情の変化を、雑賀は見逃していない。
開放的で、明るく、ほころぶような笑顔が浮かんだからだった。
ごく自然に……その一瞬、雑賀は猛烈な嫉妬に襲われた。
 「――プライヴェートだよ、どうぞ座って」軽く敬礼を返してから、彼――古代進は
そう言って女性たちを座らせた。

 「どうした? 珍しいな」佐々が言う。
「いや、君を探してたんだ。士官サロンに居なかったからね、いくつか歩いちまった」
古代はゆったりとソファに背を預けてそう言う。柔らかな笑顔と声に、あとの2人は
ぽおっと頬を染めたまま固まっている。
 士官サロンは基地の高級サロンで、出入りできるのは佐官以上だ。大尉である佐々
にはその資格は通常ないのだが、中には何人か出入り自由の許可があり彼女はその
1人である。確かに酒は旨いしのんびりできるし……だが顔を合わせる高級士官たち
と付き合いたくもなかったし、自分のある種の特別待遇について、了解しているわけで
もないので、古代や加藤、南部らが来ている時以外は、あまり近寄らない。こういった
普通のバーの方が気楽で、酒も旨い。
 「――呼んでくれればよかったのに」
通信機で呼び出せば済むことだ、と佐々は言った。
「まぁいいじゃないか、たまには」
(わざわざ探しに来たって? 何考えてんだか)
意図してか無意識か、古代の言いようは時折、女性にとっては犯罪的である。
 「それで?」
「一緒に飲もうかと思ってさ」
「これから?」 「あぁ、これから」
 言外に少し恣意的なものを感じて、佐々はうなずいた。
ただ飲みに誘っているというわけでもなさそうで、それをここで口外はできないのだ
ろう。…あるいは考えすぎで、古代はたんに旧知を温めたいだけなのかもしれない。
「ごめん、2人とも、また――」
「あ、いいわよいいわよ。大艦隊司令官殿がわざわざ探してきてくださったんだもの。
どうぞどうぞ」
「私たちのことは気にしないで♪ 古代艦長とごゆっくり」
なんだか誤解もあるような気がするが、佐々と古代は顔を見合わせて立ち上がると、
古代が伝票を持ち2人は肩を並べて部屋を出ていった。

 佐々は自覚していない。だが、佐々が“親しい友人”である相手に対して見せる様子
は、回りには十分明らかだ。ただ誤解してはならないのは――これが相手が古代進で
なく森ユキでも同じだったろう、ということなのだが。
 (友人、ね――)
その様子を眺めていた雑賀美樹は、佐々の言葉を口の中で繰り返した。
(古代進――親しい友人、か)
多くの人はその境界をどう捉えるだろうな。
 彼はもう少し飲んでいこうと思って、おかわりを注文したのである。

Fin


eden clip


――A.D.2205年頃 on the Moonbase
綾乃
Count007−−05 July, 2008


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背景画像 by「デジタル素材の部屋」様

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★TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』をベースにした二次創作(同人)です。
ただし、オリジナル・キャラクタによるヤマト後の世界の短編ですので、ご了承ください。
★この御題は、Abandon様からお借りしています。

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