不屈−戦士たちの安らぎ!?


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【不屈−戦士たちの安らぎ!?】

−−A.D.2200/月基地にて
:二字熟語 No.13 【不屈】

 
−−このお話は、ギャグです(爆)。一応、設定はきちんとやっとりますが
加藤三郎と山本明を巡る、月基地でのドタバタです。
ご家庭もののコメディです。腐ってます。
ヤマト戦士たちのイメージを壊したくない方々はお読みにならない方が賢明です。
特に、2人のファンおよび戦闘機隊員はやめといた方が、いいですぜ。
作者・ふじわらと原案・秋本の煩悩全開storyですので、
この警告を無視してお読みになった場合、あとの責任は持てません。
悪しからずご了承ください(_ _)

= 1 =


 ヤマトはぎりぎり、間に合った。
そして、地球はもとの青さを取り戻し――その為に戦った翼ある狼たちは今、
束の間の時間ときにその羽を休めている。


 
 月基地――。

 今日も、阿鼻叫喚が……。
「まぁった、加藤っ!! どうして一度言ったことが、できない、わけっ!」
冷たい目をして、よく通る声で怒鳴りつけているのは、山本明・第二基地司令
隊長である。
 食堂のひと隅。
 その凄絶な雰囲気に、こそこそと部下たちが背を丸めて見ないふり、聞かな
いふりを決め込もうとしている。此処、第一の連中も、山本と一緒にやってきた
第二の連中も。
――明日から合同の演習が3日間、行なわれる。
その緊張感で、月基地もいつもの雰囲気では無い……わけではない。
若い新兵たちの緊張は、別の理由なのである。
 「また、やってるぜ、加藤さんと山本さん――本当に、親友同士なのかな」
以前まえから寄ると触るとあれだよね。…なぁ、何かあったのか?  第二でさ?」
こそこそと、加藤隊の部下たちが山本隊の人間をつかまえて囁く。
「……わ、っかんないんですよぉ。いつも山本さんて何考えてっかわかんなくっ
て」「怖い?」「――でも、こんな怒鳴るなんてこと…」
「静かな迫力がかえって不気味だよな」
 こそこそこそ。

 突然、その山本が振り返った。
「そこっ!! こそこそごちゃごちゃ言ってるんじゃねぇっ! 邪魔すんなら、出て
けっ!!」
あの、凄絶にキレイな目を真っ直ぐ向けて指差されたりすれば、それだけで心
臓が止まっちまうかもしれない。
第二基地の新兵たちは、心底彼が恐ろしかったので、ひぇっと言って食いかけ
の食事もそこそこに立ち退こうとした。
 すると、山本に怒鳴られて小さくなっていた加藤隊長が、
「おいっ。食べ物を粗末にしたらバチが当たるぞ。きちんと、最後まで食って、
『ごちそうさま』してから帰れ」と。
まるで現在のシチュエーションを無視した言葉を発し、びくびくしている若者た
ちはまた困った。
 案の定、その能天気な口調に、山本は加藤の頭を思い切り殴った。
「てめっ! 余所見してるんじゃねっ!! 今は、俺が怒ってるんだろっ」
「……でも、山本よぉ――ご飯、残すとお母ちゃんに怒られる、だろ」
あ、しまった。
――山本には“お母ちゃん”は居ないのだった。その失言を思い出して、加藤
はきっぱり下を向く。
「ご、ごめん……」その情け無い姿は、部下たちの涙を誘った。

 
 (あ〜。ちくしょう、しまったなぁ……遅くなっちまった。怒ってるだろうなぁ…)
つい、飲み会で遅くなってしまった。
 3日後。
 第二基地の連中が引き上げ、演習もそこそこの成果を挙げたから、といって
司令の片岡たちに招ばれ、主なメンバーと打ち上げに行っていたのだった。
――途中、何度連絡を入れようと思ったか、わからない。
 だが。
(さすがに、言えねぇしな……)
家に帰れば、“妻”が待ってます、とは。
しかも、それが、男で。同僚で――たったさっき引き上げていった第二基地の
司令だなんて。

 加藤三郎は再三の要請にも関わらず、官舎に住んでいなかった。
 緊急出動があった時はどうするんだ? そう言われて、使命を取るか、愛を
取るか――迷ったが、
「……ふん。どうせ俺の気持ちや、そのほか(いろいろ)よりも、建前と出世の
方が大事なんだ。あぁ、加藤ってばそういうヤツだよ」
と言われてしまえば、そうせざるを得なかった。だってさ。
――あいつの意見を容れなかった時の報復ときたら…考えたくも無い、加藤
三郎である。
それでたとえ別れたってさ。この先ずっと、仕事じゃ付き合うんだぞ? それ
に、俺はあいつの腕も買ってるし。
どうあったってこの先、切れることなんかできやしないだろ?
 もちろん、そんな冷静な理由ばかりでもない。
(あ゛〜。もうっ。――別居なんかしたら、毎晩、浮気してんじゃないか、とか
疑われて安眠できやしないって)
……暢気者にみえても、そのくらいは相方あいかたのことを理解している加藤である。

 そして妥協点として。
もちろん隊長宿舎――官舎はある。自宅のほか、そこも加藤の“家”だった。
月に何日かはそこに泊まらなければならず、しぶしぶ山本はそれを容れた。
もちろん、第二基地も同様で、山本自身どうやってその網の目を抜けている
のか、理解の範疇を超えている処がある。
(裏で手回したとしか思えないんだよなぁ…あいつ怒らせると怖いからなぁ。
弱みでも握ったかな? 基地の総務と管理官の!?)
 ともあれ、2人の“愛の巣!?”へ、とぼとぼと向かう加藤三郎なのであった。

   
背景 by macherie 様 (以下ページ、同様)

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