air icon ある合宿 (仮)



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【ある合宿 (仮)】

−−A.D.2204年、地球
:二字熟語お題−No.14G「撹乱」

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= Prologue =
 

 「よおぅしっ。各班リーダーは集合っ――こっちへ来い」
加藤四郎隊長の声があって、一日の任務しごとを終えた戦闘機隊の面々は、ヘルメット
を小脇に抱え、格納庫の隅のミーティングルームへ駆け込んだ。
「皆、よく頑張ったな。なかなかの仕上がり具合いだ。来週10日からはヤマトへの
勤務に就任する。本艦はドッグメンテナンスと再調整航海を終えて帰ってくるから
な。いよいよ本番だぞ」
わっ、と興奮した叫びが満ち、四郎は満足そうに皆を見やった。
「――皆、新ヤマト戦闘機隊の心意気を十分に保ちぃ。われわれの存在を、きっち
りアピールできるよう。乗艦後も、がんばるように」
「はいっ!」元気な声が頼もしい。
 「そこで、だ」
加藤四郎は真面目くさって集まった副班長、分隊リーダーまでの10名ほどを眺め
回した。
「この週末からを利用して、分隊指揮官たちの連帯と意欲を培うため、“合宿”を
行なう!」
――ざわざわざわ。
 明後日から乗艦勤務前、3日の休暇。そう、平隊員は呼ばれていない。だから
普通に休暇。そのあと1日の休養日があって、ヤマト乗艦。そこからは訓練航海を
兼ね、銀河系中央へ向けての長い旅の始まりだ。
 戦闘機隊員は毎回かなりの欠損(?)が出るし、数年勤めると地上基地や惑星
基地勤務に転属になる(それだけ戦艦ベースの戦闘機隊は肉体・精神の消耗が
激しい)ため、毎回、訓練を重ねた新兵たちが送り込まれてくる。
今回、兄・加藤三郎、先輩・坂本茂から戦闘機隊長を引き継いだ加藤四郎隊長の
もと、新体制のスタートなのである。
 体制の大変更があって、全員総入れ替え――その理由は。
 「あ〜、皆も聞き及んでいると思うが。ヤマトの新艦長に、古代進が就任するから
な。これまで彼は艦長代理として功績を上げてきたが、今回は正式に第3代艦長
に決まった。ビシビシいくはずだからな、気合入れて行くようにっ」
ざわざわ――と今度は興奮の声。
「――た、隊長」おずおずと手を上げて新兵の美谷が言った。
「なんだ」ギロリ。……穏やかに見える四郎も、その気になればにらみを利かせる
こともできるのだ。
「合宿、ってどこで行なうのでありますか――集合は」
「二泊三日。メガロポリスの神田明神下と呼ばれる加藤家だ。先輩がたも参加され
貴様らの面倒を見てくれるからなっ。気合入れて臨めよっ!」
 ざわざわざわ…。
加藤隊長んち? またそれは……開いた口がふさがらなかった部下たちである。
――いったい何が飛び出してくるのやら。


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 「加藤さんっ」
引き上げ際に横に並んできた馴れ馴れしいのは揚羽武である。新兵だが、その
“天才”ともいえる飛行技術を買われ、新艦長・古代の意見も容れて、副隊長に
昇格させた。
「おう、揚羽。期待してるからなっ」
「――はい、もちろん」
揚羽はその美麗な横顔に笑みを浮かべている。
「――加藤隊長の家も大きいのですか? 僕は下町の方は足を踏み入れたこと
もないのですが、使用人はどのくらい? ゲストルームはどのくらいあって――敷
地もお広いのでしょうね。うちも園遊会などの時には外部の方を入れることもあり
ますが、洋風に作りすぎましてね。和風の春夏秋冬の庭園もなかなか良いと聞い
ています、神田の方なら、そうなのでしょう? それに飛行場も完備してるとか?」
淡々と並べる揚羽に、はぁ? とクエスチョンマークが思い切り浮かんだのは四郎
の方だ。
 そうだ。こいつはとんでもねー、お坊ちゃまくんなのだった。

 夜の添い寝から、朝のお着替え、入浴のお手伝いまで付き人にしてもらい、食
事は食堂で配膳係が給仕するような家庭で育った。そりゃ兄貴の友人――ヤマ
トの先輩でもある南部さん家に比べれば新興だ成り上がりだといわれているが、
豪邸の設備や何かでは連邦で十指に入るだろう――いつぞや雑誌に紹介され
ていたのを見たな。
「ち、ちがうぞ。――合宿というのはな。全員が雑魚寝をし、布団の上げ下ろしか
ら調理から皆、交代で自分たちでやって共同意識を養う。毎日、体練と精神修養
を繰り返し、先輩や長老を敬う、という精神と肉体を鍛えるのだ」
よくもまぁスラスラと出てくる加藤四郎だが――さんざ、兄貴の三郎から吹き込
まれたからであって、四郎はどちらかというと、こういう“体育会系”の“義理人情
系”は、苦手である。要領良くぱぱっとやってしまいたい。ラクはできるならした
たい――金で解決できるならすればいい。精神力なんぞ鍛えてもいざという時、
使えなければ役に立たない。
――純情で真面目一直線の兄貴が聞いたら殴るか口から泡を吹いて怒りまくる
だろうが、その本音を押し隠して十ン年。そんなのを腹の底に仕舞ったまま、訓練
学校に入り、軍隊で偉くなるのなど朝飯前、の四郎であった。

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背景画像&イラスト by 「きまぐれ工房」様 

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