再会−至上の愛
−−A.D. 2218年頃
パラレル・ワールドの古代&ユキ(4) SY-お題No.95「ラブシュープリーム」 == Prologue == (さて、これで良いわ) パチン、とスーツケースのふたを留めて、書類とデータ、携帯用の器具の入ったバ ッグを肩にかけた。スーツケースの中には白衣と着替えなどが入っている。 身軽な−−旅慣れた身には、さほど重くはない。 戸をあけて、軽く室内をチェックし、明かりのスイッチを落とす。 でかけようとした途端、トゥルルル…と携帯の音が鳴った。 「はい……あぁ」 ケースを玄関の脇に置いた。 「……えぇ。ガニメデまでね。様子にもよるけれども、さほどに長くはないと思う わ。…大丈夫よ、お母さんを信頼しなさい。そのあたりはプロですからね、自分が 感染するなんてことはないわ。――えぇ。貴方の発表の日までには戻れると思うわ よ、がんばってね」 ほぉ、と軽いため息をついて、切った。 すっと顔を上げると玄関を閉め、少し肌寒い戸外へ出る。 地球はもう、冬を迎えようとしていた。 森ユキ、36歳。 中央病院医師――宇宙放射線病の専門家 。 ガニメデ行きの艦は、あと2時間で出航だ。 |