【宇宙戦艦ヤマト・パラレルAの世界 より】


window iconメタンの海を背に...the bad ko-worker...


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【パラレルAの世界:新月world】
A.D.2215年、木星宙域・輸送艦《あさかぜ》



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 ワープアウトして一見平和に火星から木星へ向かう宇宙空間を移動中の輸送船団と その護衛艦隊。その旗艦の艦橋同士では、平和どころではない喧騒が響いていた。


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 「島ぁ〜。俺の言うことが聞けないってのか?」
「こちらの方が効率が良い。しかも安全性も高い――議論するまでもないな」
こっちの艦長の方が冷静にみえる。
「だっから俺はお前と組むのは嫌だったんだよっ」
艦長としての発言とは思えない科白が通信を通じてこちらの広い艦橋に通ってきた。


 護衛艦の艦長と輸送船団の艦長兼船団長。どちらがエラいのか――。
答えは“対等”である。職務上の地位からすれば、中佐の古代の方が少佐の島よりも上。
 だが、立場上。仕事上。この“輸送”という目的のはっきりしたプロジェクトにおいて、 航路を決めるのは船団長であり、その舵を執るのは艦長であり航海長でもある島大介の方なのである。 ――もちろん、戦闘が始まればその位置関係は一気に逆転するのであるが。
 パネル越しに相手方の艦長の顔を眺めていた艦橋乗員は、 手の空いてる者は顔を見合わせてほぉとため息をついた。
 そんなこと言ってもなぁ――。
 古代進と島大介ったら、“命を賭けた親友”の代名詞だろうが……本当は仲が悪いんだ、 という説の方が本当なのじゃないだろうか。
世間はマチガッテると思う。
実態はこんなものだ、と双方ともにそう思った。


 「わかったら、そうしてくれ」
最後に島もタメ口に戻ると、そう言って顔を上げ、相手方の艦長を見た。
「了解しました――護衛艦イサス、これより貴艦に続き、木星への進路を執ります」
ふっと前触れもなく、艦長の姿が消えた。
――拗ねたに違いないのだが、それは島にしかわからないことだ。
だがそれを“わかられてしまう”から、“島とは組みたくない”古代なのだが。


 あ〜あ。
 その、艦長室へ去った横から通信を切り際にひょいと副官が顔を見せた。
艦長が航海長席に移り、通信範囲から外れてこちらの副官の顔を見つけたからだ。
『勘弁してくださいよー。艦長の御機嫌引っかぶるの俺たちですからねぇ…』
困った顔をして、苦笑すると、じゃ、よろしく、と通信を切る。副官の眞南も、 島や古代とは親しい間柄だ。多少年長だが――そうだろうなと思うこちらの面々。 相原通信参謀でも乗っていれば、そんな時の古代をあしらうのはお手の物なのだが。
 地球の英雄で防衛軍の鷹――カリスマと崇められる艦長を、なだめられるなどという 人間はもとのヤマト乗組員以外にはあまりいない。
 だから、煽らないでほしい――つくづくとその“同僚”にそう願う古代艦の乗組員 たちなのであったが。なににせよ、艦は島大介の示唆したとおり、予定を変更して、 迂回ルートに入った。



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★TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』をベースにした二次創作(同人)です。

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