navigation clip 駆け出すお前の背中を

・・in the space, 2204・・


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【05.駆け出すお前の背中を・1】


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:三日月小箱「少し甘い二十之御題」より No.5-1



 操縦席から見下ろす目の前をふい、と浮いたコスモ・ゼロが舐め、 一瞬浮くようにして切り込んで加速するのが見えた。
 島大介は、目を閉じて腕組みをする。
 (行け、古代――緒戦は、任せた)


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 「古代っ!!」
「ブラックタイガー、発進準備! 南部、各砲塔発射準備!!」
そう叫びながら古代はすでに駆け出している。
 駆け出すおまえの背中を一瞬、横目で眺め、俺たちが言葉を交わすことは、なかった。


 「仰角30度方向に、敵・3000! 来ます!!」
森ユキの声が響き、『島!』という古代の声が降ると、 南部・太田・相原と自動的にリレーションしたようにそれぞれの目の前のパネルが光り、指が走る。
 ヤマトはぐいと力を得て、スピードを上げた。
 あいつの背を追って、戦いに行く龍――それが、このふねだ。


 古代の戦いが終わり、艦橋へ駆け戻れば自分の出番だ。
 ワープだったり、艦隊戦だったり、ヤマトそのものを武器として、敵の前に立ちふさがる時、 俺はヤマトと一体になれる気がするのだ。 そうしてヤツも戦闘指揮席に飛び込み、南部から受け渡された阿吽を引き継ぐと、 ヤマトの中に身を修めるように見える。


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 「古代!!」「――島……?」
 一瞬、ヤツが怪訝な顔をしたのに、自分で気づいたかどうかわからなかった。
 何故俺は、走り出したんだろうな、ヤツの隣を。
「艦長!」沖田さんに告げ、真田さんと太田の頼もしい目線に支えられ、俺と、相原は、 甲板に続く通路を走った。


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 古代――駆け出すお前の背中が、今日ばかりは遠かった。
加藤が走り、古代が去る。
「島。ヤマトを動かしてくれ――コスモタイガー、発進だ」
「わかった……」
目は霞み、足元がおぼつかない――だが、自分のやるべきことは、艦橋にあるのだ。……それと、 お前の背は――護れたのかな? 
 ヤマトは、お前自身だから……古代。


 それからのことは混乱と喧騒の中だ。
 ヤマトは口を開け、そうして発進した――それで、いい。
 艦橋の入り口から古代が駆け込んできたのを、どこか遠くで聞きながら、逢えたな、 と思った。てのひらの温度が、急激に重くなっていく自分の体を支える。
 ゆき、そして古代――。
 悪くない人生だったな、と俺は思っているのだから――泣くなよ?


 金色の光がチラリと光った。
 そうか。――この艦も逝くのだな、だから、待っていろと。 そうだ――君の許へ行くのはもう少し延ばすとしようか……どうせこの先。 ずっと一緒にいられるのだから。


 古代。
 お前の泣き顔なんて見たのは何年ぶりだろう。がんばって、生きろよ。
 こんな中に置いていく――すまんが、任せたから。いろいろ。


 西暦2204年――太陽系へあと1ワープの宙域。ヤマト航海長・島大介は逝った。
地球は、水没を免れ、許の緑の息吹を取り戻しつつある。
 【Fin】


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――06 Feb, 2011

=あとがき #05a=
 
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この作品は、TVアニメ宇宙戦艦ヤマトの同人二次小説(創作Original)です。

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