新月倉庫YAMATO'−Shingetsu World:お題100(KY・No.38)より

fish icon離れ離れ


= 宵闇の桜の下には酒があるのだ =

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【In the Orions’ 2199】
:古代進と雪の100-No.38「離れ離れ」
『宇宙戦艦ヤマト3』の後


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 「なんでですよ。春といえば、花見。花見といえば、酒、じゃないっすか」
といきなり衛星間通信で言われましても、なぁ。の古代進である。


 古代進は月に居た。
太陽膨張により灼熱地獄と化した地球――それが急速回復しての今日である。 いつもながら地球人類のこの××××のような生命力はどうなのだろう、と自分もその一員 でありしぶとく生き残ることにかけては、いくら否定しようと実証済みだのヤマト艦長(現在、 艦はメンテナンス中のため任を解かれて別任務に就いている)だ。


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 「で? それでメンツは!?」
いつものヒトビトですよ、と南部はメガネの下の瞳をきらりん、と光らせてそう言っ ただけで、詳しいことは語ってくれない。――それはそうだろう、こいつがそんな親 切なものか。と内心、疑いで真っ黒になっている古代である。
 地球が灼熱の太陽から開放されてほぼ半年が過ぎた。生活圏の再構築はほぼ完成し、 地力の回復と自然環境の充実に力が注がれていた。もちろん、宇宙へ出る者たちのラ イフラインの構築・防衛圏の再設定と、地球防衛軍(名前も変えた方が良いんじゃぁ ないかと古代などは内心想っているのだが)の仕事は山ほどあった。
 その中で、現場で戦いになれば最前線、ということでやってきたヤマトの面々―― 特に古代進のような戦闘指揮官は、やはりあちらへ飛ばされては現場開発、こちらは 飛ばされては調査、と飛び回っていることが多い。それでも当面は短距離に限られ――つ まりはまだ遠距離へ出られる大艦隊は建造の最中だったし、有用な人材を安心し て地球から離しておくほどに世の中が安定していたというわけではなかったのだ。


  「久しぶりに島さんが帰ってくるんですしね。月の連中も集まれるんで、まぁ“艦 長”としてはのんびりして偉そうにしてていただけば良いですって」
南部は暢気なことを言うが、俺が今、居るのもその月だよ、と古代は言いたい。
――なんだ? 何故、月に居る俺が知らなくて南部が仕切ってんだよと思わないでもない が――現場へ入ってしまえばなかなか逢う機会も少ないのが現状だ。しかも表と裏じゃあな。 と同僚で盟友・加藤四郎戦闘機隊長と、その仲間連中を思う。
――あれ? あいつ休みなんだっけ? 地球に戻った、のかな。
 島大介は相変わらずライフラインの資材運搬に飛び回っていて、古代以上に地上に いる時間は少なかった。それぞれが短距離で、太陽系の航路に限られたが、もともと の所属である第8輸送艦隊はいち早く復活しており、それを仕切っている。距離とし てたいしたことはない、とはいえ、地上に戻ればまたすぐ出るといった具合で、よう やく佐官になり上級フロアに得た室の席も温める時間はないという噂だ。それでも留 守を預かるその室は、いつ行っても忙しそうなのだが……。
 「わかった。――三日後だな」
「えぇ。……桜が見ごろだといいですね」
「祈ってろよ」と言う古代を聞いて通信は切れた。
 古代は明日1日を月で過ごし、報告書を書いて終わり。
そうすれば地球へ戻れる――とはいえ待ってるはずの森ユキとは。今回はすれ違いな のが残念無念。


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