星屑スターダスト −ガニメデの白光−


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星屑スターダスト −ガニメデの白光−】

−−A.D.2207/ガニメデ基地にて
:二字熟語 No.02 【星屑】

ご注意とお願い  ▼△必ずお読みください▲▽

−−このお話は、宇宙戦艦ヤマトの二次創作小説ではありますが、
まったくのオリジナルキャラクターが主人公です。
宮本暁 という古代や加藤らより年長の戦闘機隊員で、
三日月−新月worldの主要キャラクターの1人です。
ヤマトの物語のイメージを壊したくない方、登場人物・作品に思い入れのある方は
お読みにならない方が賢明です。
特に、戦闘機隊員ファンの方はお勧めできません。
この警告を無視してお読みになった場合、あとの責任は持てません。
悪しからずご了承ください(_ _)
−−なお、原作の著作権を侵害する意図はなく、勝手にやっております。
掲載作品およびデザイン等、ウェッブ上のコンテンツの著作権
は放棄しておりませんのでご了承ください。
無断転載・転売・設定の勝手な持ち出しその他はお断り申し上げます。


 

= Prologue =


 芽衣めい――大丈夫か? 芽衣。

 柔らかな声が頭上から振って、彼女はうっすら目を開いた。
……うとうとしていたようだ。
 昨日、飛びまわって疲れたろうな。けっこうヘビーだろ、あの手の演習は。
そんな声がぼやんと頭の向こうから聞こえてくる。
――柔らかな、落とした光が部屋を包み、空気ごと和んでいるような気がする。
ふんわりと抱き込まれて、あぁ、気持ちがい――と思った。

 「ん……眠ってた、かしら」
首を伸ばしてちゅ、とキスをくれる柔らかな唇にそれを返し、吉岡芽衣はそう
言って目をしばたく。くすりと柔らかく笑う雰囲気があって――この柔らかさが
好きだな――「いや」という心地よい声が耳元に響いた。
 そのまま首筋にもキスを落とされて、くすぐったいと首を縮めると、相手はそ
の黒い瞳を見開くようにして
「眠いかい? それなら少し眠るといい」――そう、言った。

 彼が声を荒げるのなど聞いたことがなかった。
 こういう風になって、どのくらいになるだろう――1年? それとも、2年?
自分がこの基地に赴任してきてからのことだったから……たまたま寄航した
ふね に乗っていて……逢ったのだったから。そうね、2年は経たないってところ
かしら?
それでも年に何度、会えるかはわからない、あいて
――そして、たぶん恋人……というのか。行く先々の惑星ほしに翼を休める 間、
こうして腕に抱くのは私一人じゃない……そんな噂を否定もしない。

 ずっと年上の、優しいヒト。
この人が、兄と共に――ヤマトに乗って白色彗星と戦い、そしてあの時代に
は地下に潜ってパルチザンの先頭を切っていた、なんて。とても信じられない
くらい。私にはとても……とても、優しい。
 (だからきっと、兄さんの夢なんか見たんだわ――)
優しかった兄。
幼い頃、よくこうやって頭をくるみこんでくれた。
歳が離れていたから――訓練学校に行ってからは、帰るたびに……そして
あの暗黒の日が来た。

 芽衣は上半身を起こして、髪を撫でていた宮本暁みやもと あきら――自 分にとっては大
先輩に当たる恋人に頬を寄せると、「宮本さん? 明日は、何時?」
と訊ねた。
「――心配要らないよ。君よりは早くないから」
よく見ると微笑んでいるのだが、ぱっと見、無表情にしか見えない端正な横
顔をこちらへ向けて彼は言う。
……美形よね。そう思う。
兄さんも相当、美男だったけど――どことなく、まとう空気が似ているのだ。
彼と、兄とは。
柔らかな口調も、私に向ける微笑みも、そして腕にくるまれた時の温かさも。
そして、おそらく――戦場では狼になるのだろう、その匂いも。
戦う男の、嗅覚。
 芽衣は、それごと宮本を好きだった。
(いままで、こんなひとは居なかったわ――)
そう思って、ぎゅ、と腰に回した手を抱きしめる。
――その芽衣自身、その戦場の匂い、宇宙の匂いを持った女豹だから。
ガニメデ基地駐在外周戦闘機隊の1人。兄の後を追って――此処に居る。

 「ん? 芽衣?」
「なんでもない――ちょっと、こうしていて」
「あぁ」
望まれるままに抱き合って、だが髪と首筋の間に、柔らかな息がかかる。
 んっ――。
吐息が、漏れた。

 
 
背景 by Kigen 様

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