lightアイコン深夜〜第一艦橋で

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「艦長、呼びますか?」
とユキが目を上げて真田副長に問う。
さぁて、どうするか。と腕を組み、島副長を見やると、島は。
「要らないよ。今、当直明けたばかりだろう――このくらい、俺たちでどう
にでもなる。あとで報告しておけばよいだろう」
と同意を求めるようにユキを見た。
 艦長のくせに当直なんて入らなくても良いんだ、と言っても聞きやがらない。
格納庫当直とコスモ・ゼロでの定時哨戒はさすがにやめさせたが、第一艦橋
は。……小さな出来事で寝入りばなを起こしたくないのは、ただでさえ激務の
仲間を気遣う、このメンバーなら当然のこと。
「あぁ、そうだな」と真田は言った。
 「念のため、調べましょう」
と隣の戦闘指揮席に座って、第二艦橋へ指示を出す島だが
「まぁたいしたことないと思いますよ。――何かあれば、その時たたき起こせ
ばいいんだしな」と言って。
 その古代進はきっと。
今の衝撃で目覚めているだろう、と真田は思う。だがきっと。呼ばれない限り
動くまいとも思っているのだろうな、と。
島と、俺が、ここにいるから。
――そういうヤツだよあいつは。…だから少しでも眠れ。
それはそこに居る3人とも、の想い。


 シュンと音を立てて、朝番の者と交代した艦橋を後にする。
ふわぁぁ。
とさすがに眠いな、と言うと、「真田さんでもそんな顔するんですね」とくすくす
と島が笑う。
「お前こそ、酷い顔してるぞ」
とは、まだ昨夜くっつけた油沁みがこすったために広がってしまったからだ。
「シャワー浴びて寝よっと」と島は言って。
「いやぁでも助かりました。あれからずいぶんレスポンスが良くなって」
結局は真田が修理して回線ごと取り替え、基盤を入れ替えなければならな
かった。
「思ったよりイカれてましたね」
「あぁ…まぁ重労働だからな、操作パネルも」と。

 居住区で。
「おやすみなさい」
当直明けとはいえ、数時間もしないうちにまたあの席へと戻る島。
 お前こそよく寝ろよ――古代の心配ばかりしていないで。
と真田は思う。
「また」…そう返して真田も。
ふと居室へ向かいかけたのをひるがえし、やはり一旦工場へ足を向ける
自分がいる。
朝まだ来――未明の艦内に、二人の副長の姿が呑み込まれていった。

【End】
綾乃
−−28 May,2006
 
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