airアイコン 奪回−宇宙そらの果てで

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= Epilogue =

 「よう、お手柄だったな」

 機体を収納し、野坂に報告を終えたあと、佐々と一緒に守の様子を見に行った。
眠っているということで外から見るだけにしたが、ユキに見守られて眠っている
様子に安心して、古河大地はそのまま戻ってきたところだった。
桂木が待っていた。
 桂木も、やってきた相原らと共に工作員として借り出されていたのだ。
電波分析に始まって、位置の特定や爆発物の適正な配置。そして動線の示唆。
工作班員の仕事とのリレーションも、こういったときには重要である。
「お前も、お疲れさんだった」
「守くんが無事でよかったな」「あぁ」
ぽふ、と肩に手を置かれて、桂木を見上げる。
 無事、というのだろうか――片足を折られ、親指と人指し指の爪を剥がされ、
背に打撲傷。それと長く後ろ手に縛られていたのだろう、脱臼が認められた。
それに軽い脱水症状と貧血。
 だがさすがに古代の息子だ――神経症や精神的に参っている様子は見せな
かったというから、見掛けは優しげな美少年ながら、なかなか肝が据わっている
のかもしれなかった。
「古代の息子だから――というより、ユキの血だな」
笑いながら大地は言う。
そうか、と笑い返す陵が、
「無事でよかった」そういって軽く抱き込んだ。
「おい――」まだ基地の中である。「家帰ってから、ゆっくり」
そう返すが、あぁ、と微笑んだまま手を離そうとはしない。
 一応、ひと目だってあるんだぞ。

 2人の関係は、隠してもいなかったので幹部連中や隊の人間は知っていたが
やはり、おおっぴらに宣伝して歩くようなものでも、公的に祝福される立場を得る
ようなものでもないのは200年の昔から変わっていない。
見ないふりをして目を逸らすのが、せいぜいの世間様の反応なのである。
ましてや古河は分隊を率いる隊長――基地内での立場というものがある。
 ただでさえ、童顔で、かわいい美少年系――年齢よりひどく若く見られるのを
気にしているのに。実績からいえば、それは――いや実戦共にする連中で、彼
をその容姿や性癖から莫迦にしようとか嘲笑からかおうなどという命知らずは、 もはや
此処にはいなかったが…。


 そいつら、どうなるんだ?
 直接、守くんを拉致した連中は、刑事裁判にかければ極刑さ。
だけどな――それもこれも、交渉の結果次第だな。
 交渉なんて、成立すんのか?
 ――するだろうよ。政府あっちに有利なカードにでも、するつもりに違いないや。

 最後は吐き捨てるように言って、古河大地は桂木陵のふところに もぐりこんだ。
あ〜あ、今日はもう、寝ようぜ。
さすがの俺も、朝の置きぬけからの連続勤務じゃ、疲れたわ…。
 あふ、と欠伸をして。ん……。−−!

 ――おい、やめろって。
 だから……寝ようって。明日休みだから、起きてからなら、い〜から。

 おい、だから……。

無駄なあがきというものだろう。

 ガニメデにも、2日ぶりの平和な夜が訪れていた。

Fin




・・・古代進と森ユキ ファンのための
= Epilogue・2 =

・・・加藤四郎と佐々葉子ファンのための
= Epilogue・3 =

綾乃
−−30 July, 2007 Original
 
背景画像 by「壁紙宇宙館」様

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