【宇宙戦艦ヤマト2199・第五章 より】


moon icon 暁の軌跡 ...a locus...


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 「どうして?」
「そりゃ、オレたちが優秀だからだよ」三郎が言い、
「あんたは黙っててっ!」
と玲がかみつくのを。……明生は静かに言った。
「――俺たち、希望したんだ」
目を見開く玲。そして彼は続けた。
「いずれ、どこも戦場になる。それなら、意志を貫く方がいいと思わないか、あきら」
「兄さん……」


 3人は少し言葉少なに、窓に映る宇宙を見た。
「この宇宙(そら)が−−もう地球人のものじゃないなんて…」
「そうなってしまう前に、だから。俺たちは行くんだ」
明生がそう言い、三郎が頷いた。そして、玲も……。


 「兄さん。加藤さん。……お話が、あります」
朱い瞳が輝いていた。




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= 2 =


 そうして、玲自身も高校へは進まず、付属訓練学校を経て入隊した。
兄の後を追って、航空隊へ。
しかも最優等の成績で、だ。


 最初2人は猛反対したが――中でも兄・明生よりも加藤の方が大反対した。
「女の子は大人しく地球で待ってろ、とでもいうの?」玲は折れず、
「そんなんじゃ、ねいっ! お前のは、兄貴の傍に行きたいだけだろが。 命のやり取りすんのに、そんなんは、迷惑なんだよっ」
「――成績、上げてみせる。足手まといになんか、ならない。これでも運動神経抜群で、 成績だって、いいんだから」


 実際、入隊してからの玲の成績は明生のそれを凌駕するほどで、 訓練学校ではトップクラスを維持し続け、“さすがあの山本の妹”と言わしめた。


 軍に入ったことで、かえって生活の不安はなくなった。
避難生活を送ることもなく、玲はその中で様々なスキルを身に付け、 休暇には兄や加藤に会い、そうして卒業を控えていた頃のことだ。
 ガミラスの攻撃は激しさを増し、最前線の火星にそのまま配属された2人は、 着実に実績を上げていった。


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 篠原が言っていたっけ。
《高いところを一直線に飛んでいく、気高く、美しく、力強い軌跡――》
コールサイン【ソード3】。
それは兄・明生の美学であったかもしれず、その飛び方は、彼そのものだった。
《偵察は、生きて、戻ってくるのが、役目だ――》


 偵察と情報収集で戦闘の露を払う、山本明生。
 切り込み隊長、戦闘の要を握る、加藤三郎。


2人のコンビは、永遠に、続いていくはずだった………。


 「兄さん……」


 いまでも夢に見る。赤いペンダントだけを残して逝った、兄の柔らかな笑顔と、頭をくしゃ、 としてくれた手の大きさを。


 私は……跡を、継げているだろうか?


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