【宇宙戦艦ヤマト2199・第五章 より】


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 「本当に、お前は、はねっかえりだからよ」
ヤマトの乗組員たちにはクール・ビューティに映るらしい玲も、 三郎に言わせるとじゃじゃ馬な妹にすぎない。
「……古代が認めて、艦長が判断したなら、俺の言うことはない。だがな、あきら」


  『第二次メ号作戦』――冥王星の戦いの直前、玲は正式に航空隊に配属替えになった。
ヤマトの航空隊責任者となった加藤三郎二尉は、 玲の配属を認めず……それは命のやり取りをする航空隊でガミラスの真っただ中に突っ込むことを、 親友の妹にさせたくなかったから。残された命を大切に、護りたかったからに他ならない。
その気持ちは玲にも通じていた。だが玲は−−
(それでも。私は、飛びたかった。兄の後を、そして、あの人と共に)
そこにはヤマト戦術長・古代進の姿がある。
 そして玲(だけではないが)の活躍により、ガミラス最前線基地は壊滅した。
 地球に、もはや遊星爆弾が降ることはない。


 その大きな戦いが終わった時、三郎に言われた。
「――航空隊の一員として、これからも俺たちと飛ぶんだろ。
俺の部下だ。これまでのようにはいかないぞ」
「……わかっています」
憎まれ口を利けた、兄のような人ではない。現在は、直属の、上官。
「――あきら。……一つだけ、言っておく。明生に、兄さんに囚われるな。 自分の理由で、飛べよ……命、大切にな」
「加藤さん……」
 加藤三郎とは、そういう男だった、と玲は思い出す。
大きくて、思いやりが深い。ただそれを見せないだけで。
口利きが乱暴なだけ。はい、と頷いた時には、もう彼の姿は無かったけれども。
(兄さんの面影を重ねるんじゃなくて――。恋愛はいいことだぞ? 死ぬのがいやになるからな)
そうも言った。
目の中に、少し同情的な色がなかったか?


 古代、進−−。


 私を認めてくれた人。
 穏やかで、端正で、だが自分をわきまえて常に何かに耐えている男。
 そして、優しくて……鈍い。
 実力は一級。何よりもそこに惹かれた――だから。
 兄さんとは違うのだ。


 気になる人、森雪。彼は、彼女を愛しているのかしら。 ……それでもいい、と思う。


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 銀河系外洋にヤマトは漕ぎ出し、 ガミラスの攻撃はさらに熾烈を極め始めた。


 旅はまだ厳しく、そしてヤマトは不安定なまま−−だが、山本玲は信じている。
仲間とのつながり、自分が信じた人への気持ち。
 だから戦うのだ――自分の裡なる敵とも、そしてそれを蝕む人々とも、敵・ガミラスともだ。
そのために命賭けて。


 ヤマトはバラン星のゲートを突破し、マゼラン大星雲の端緒に着いた。
 旅はまだ、半ばを過ぎたばかり。


 山本玲は、今日も宇宙を飛ぶ――加藤や篠原や……仲間たちと、共に。


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【End】
2013-04.24 綾乃・筆


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