airアイコン 火星の誘惑

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== Epilogue ==



 「ごめんごめんごめんごめんっ」
そう言って、抱きこみながら顔中にキスしようとする四郎に、
「ふざけてるのっ」と怒り笑いする葉子。
「――久しぶりだね」
急に真面目になられて。
でも、キスしてたのは、事実なんだし――と、ふ、と思った葉子である。
「誤魔化されませんっ」ふい、と横向く。
「妹の方にしたければ、いいのよ」
なんて。
 「葉子さん――ヤキモチ妬いてくれたの? 嬉しいなぁ」
にこにこと、ここは笑顔で押すしかない。
 実際――いくら葉子に似てたことが原因だと今さらながらにわかったとは
いえ――他所の女といちゃついていたことは事実、の四郎である。

恋人としては言語道断。

 ひとしきりベッドの上で服のままふざけあった末。
 「僕の気持ち、わかった?」
と真面目な顔して言われた。
「え?」と問い返せば。
「兄さんと貴女を取り合う僕の身にもなってよ――」
 あぁそうだった。
生者ではないとはいえ――兄弟を、愛したことは事実だし。
現に私はまだ、加藤三郎を忘れてはいない。
 「おあいこ、といいたいわけ?」
睨むように顔を見上げれば。
――いや。そんなんで今日の貴重な時間を無駄にしたくないだけだ。
せっかく、逢いにきてくれたんでしょう? あと1日しか一緒に居られない。
また貴女は古代さんと行っちゃうんだ……。
 何言ってるのよ。
 熱い唇が四郎の唇を被って、そのまま長く――。
恋人たちの逢瀬――3か月ぶり。


「やっぱり――好きよね、私」
え? と四郎は言って。
「貴方が好き――だって言ったの」
赤い顔して。
「もっと言って」と四郎はご機嫌。
「――誰にもあげない。……って今は思ってるわ」と激白。
 「葉子さん!」
と感激した声がして、ぱふ、と抱き込まれた。
あとはもう――長い夜は2人のもので。
熱い吐息が漏れ続けたからといって、覗くのは失礼かもしれない。
再会の夜といえば、そんなもので――。

 場所は火星――。
宇宙戦艦ヤマトが、アクエリアス・ルナに沈んで2年の月日が過ぎていた。

Fin


綾乃
−−26 Sep,2006
 
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