【欲しがる想いに10】より

      window icon 嘘つきな唇に 優しい罰を。


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= 1 =

 第二砲塔で、担当している砲を磨いていたら珍しいやつが現れた。

 「――班長!?」この室のリーダーたる豊橋至が言って
「珍しいねぇ、戦闘班長っ。艦載機本業になっちまったんじゃないかと思ったぜ?」
「ほんとほんと。制服取っかえたらどーよ、班長」
からかう口調、だが揶揄している響きにならないのは同期や友人たちが多い所為。
 「……参ったな、勘弁勘弁」古代進は頭に手をやって部屋へ入ってくると、「豊橋、少
し時間あるか?」と言った。
「おう……はい。なんでしょう」
いや、どうだ? こっちの様子は、と気軽く話す口調は、ヤマトのNo.3だか4だかの地位
にいる戦闘班長・ブリッヂクルーのものではなく、砲術を専攻していた訓練学校時代の
ものとあまりかわらない気さくさ。対する豊橋も、生真面目な口調を崩して破顔すると、
あぁ、皆よくやってるよ、と言った。
 なぁ、と顔上げて見られるのに、その目線を向けられた陽はドキりとして、
「え、えぇ。リレーションも、バッチリ」片目をつぶってみせる。
古代進も、あの頃のままの笑顔で「そうか。ひかりも元気そうだな」と言った。

 鎌坂 陽かまさか ひかり――古代進や、砲術長を務める南部康雄、 そしてこの砲塔のリーダーである
豊橋 至らと、訓練学校同期・第四期生。女性隊員の少ない艦内において、戦闘員の
一角を占める砲術士官である。
 仕事の伝達事項や命令を伝えにきたわけではない、と知って、砲塔の中の雰囲気は緩む。
 砲術は戦闘機隊に比べ、現場から上がってきた者も多くて平均年齢は高いが、その分
安定感もあった。班長の南部が締め、副班長の山科がベテランの味を利かせることもあって
仕事はしやすいと皆、感じているのだ。
それは、閉じ込められた艦内で外からの攻撃に晒される恐怖感は、なかなか慣れるという
ことがなかったが。
 「たまには出撃してぇ〜、なんて思うこともあるよな」
年長の 蓼科たてしな が言って、
「ちがいねぇ。コスモガンやバズーカの腕、鈍っちまう」と坂崎。
「しゃぁねーだろ、戦艦のお城の中、此処を守るのが俺たちの仕事ってね」と豊橋が言う。
わはは、と笑いが湧いて、古代の表情もほころんだ。
 「――古代も、頑張ってるよねぇ」
傍に来た同期を見上げると、ひかりは自分の気持ちを抑えてそれを見上げ、笑いかけた。
「そうか? まだまだ……これからさ」 ふっとキツい表情になり前を向くのを、やっぱり頼
もしいなと思って。この一つ年下の同期生に昔から親近感を持っていた――はっきり認め
てしまえば、ずっと憎からず思ってきた彼女である。めったにない機会は大切にしたい。
 「古代は……大丈夫なの。艦橋勤務は大変でしょう――でもまぁ、頼りにしてるけどね」
「あ? ……島もいるし、南部や太田も助けてくれるからな。まぁなんとかやってる」
そう言う科白が本当に本心なのかどうかは図りかねた。

 「よう、お二人さんよ。……お茶でも行ってきたら?」
「そうだな、ちょうど鎌坂って上がりだろ。たまにはのんびりしろや」蓼科が言って、豊橋
が「俺も行こう」頷くと、「行くか?」と古代が誘った。
内心はドキとしながらもポーカーフェイスで立ち上がる陽である。
「じゃ、ちょっと。お先ね」「あぁ、ゆっくり休めよ」

 自分ではカリカリしているつもりはない――だが、男の中に、選ばれて乗っていると
いう自負もあり、つい気合が入ってしまい余裕が無いのも確かだった。
 それに……。

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 楽しそうな笑い声が食堂の隅から響いて、その中心に居るのが古代進とわかった 森ユキ
は、通りかかった戸口からついそこを覗くことになった。
「班長?」部下の坂部が怪訝な顔をして見上げる。
「あ。え、えぇ――」少し慌てたかもしれない。
 中心にいるのが古代進で、彼の、あんな屈託のない笑いは久しぶりに聞いたような気が
したからだ。

 「なに? やっぱそれなりに気ぃ使うよね、リーダー様ともなれば」
「そんなことないぞ。皆、よくやってるからさ。加藤もいるし、南部もいるし」
「両雄、並び立つってとこか」
数人の同期が雑談する雰囲気になっていた。
 「――古代って昔からそうだったから、別に驚かない。やっぱ凄いよ、と思ってるさ」
陽は本気でそう思ったからそう言った。だんだん凄くなってくなぁ、と思うのだ。
「そうだよなぁ。学生時代からダントツだったけどよ、ここまで勝ってきてるんだからた
いしたものだ。頑張れよ」
「なぁに言ってる」
……戦死者も出し、失敗も細かいものを入れれば数えられない。
艦長にはしょっ中怒られ、島とはぶつかり――いいのか俺? と思うこともある古代だ。
南部や加藤は大人だと思い、同じ立場の島にも叶わない、と思うこともあり。
それに……人間関係ってなかなかうまくいかない――いや仕事はいいんだけど。艦載機
隊の中だけでもいろいろあるからな。……艦橋に居ても、いちおう気配りはできている
班長だ。

 乗艦してからほとんど直接、古代と話す機会はなかった。
戦闘に入れば、トップとして降るような命令が飛んでくる。
 主にそれは南部の役割だったが、古代の指揮は明晰で的確で、早く、それは昔から変
わらない。実践の中でさらに磨かれていくような彼に、ますます惹かれていく――それに
反比例するように、直接、応対する機会そのものは、ますます減っていた。
 「女っていえばさ」BTの長崎。こいつも同期で、鎌坂はわりと親しい男だ。
「……大倉とか桑野って絶対、(ヤマトに)いると思ったんだけどな」
は、と胸を突かれたような表情で古代は顔を上げた。
「令は――」陽は古代が彼女を憎からず思っていたことを知っている。たとえ一過性の憧
れだったとしても。
「……大陸に、戻ったんでしょう?」ロシアを経由して中国を経、日本の地下都市に必死
で逃れて訓練学校へ入ってきた彼女。こくり、と頷く古代に皆が口をつぐむ。
「生きていて、くれるといいな…」
「あぁ」
 飛行科で、加藤も認めていた彼女の、意思の強い目を思い出す――「桑野は元気に
してるぞ?」その雰囲気を吹き飛ばすように長崎が言い、
「桜はパレードの警備に来てたっけな」
と古代が返して、そういえば古代と桑野も仲が良かったとも思い出した。


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= 2 =

 「どうした?」
部屋に帰ろうかどうしようかとぼぉっとしている処に、長崎 浩ながさき ひろ が通りかかった。
 「おまえ、怪我してんじゃないか」
夕方から作業に出た処、軽い戦闘になった。短時間のもので被害は少なかったが、そうい
えば第二砲塔は沈黙した、という報告を、どこかがキリキリする思いでBTの中で聞いた
長崎である。山本隊――つまり基本的には古代進と行動を共にする第二班所属の長崎。
今日も出撃して、無事、怪我もなく戻っていた。
 「あぁ……長崎」
ひかり――元気ないな。手、痛いのか?」
心配そうな瞳がズキんと彼女の胸を突く。
 いつ頃からか、もう学生の頃から古代に想いを寄せていたことを、いつの間にかこの長
崎には知られてしまっていた。ヤマトに搭乗し、なにかと気をかけてくれるこの男を、も
ちろん陽は嫌いではない。同期、という以上に想っているわけでもないが――こいつは
どう考えているのだろう? 時々、わからなくなる。

 ぐい、と腕をつかまれて、じっと見ると。
「早く、医務室へ行け。……いや、一緒に行こう。いますぐだ」
「い、いたいよ、長崎。――いいって。一人で行けるって」
「……お前、そうやって、たいしたことないって放っておくだろ? いざという時、怪我
で使い物にならない、なんてことになったらどうする?」
それに、俺だって心配するぞ。……そう言いたいのを抑えて、「古代が心配するだろ」
 どき。
「なんでっ」――古代の名前が出てくるのよっ。
「――そりゃ心配するさ。古代にとっちゃ、大切な部下だってだけじゃなく、大事な“友
人”だからな」――なによそれ。
 連れられて医務室へ向かいながら……あそこへ行けば。その、古代の“特別な女性ひと”、
森ユキが居る。

 「はい、これで大丈夫。2日ほど、あまり無理して動かさない方がいいわ。後が傷にな
っても困るし――それに筋肉が少し疲れてるみたいだから」
柔らかい口調で言うそれはとても大人っぽく、しかもきっぱりしている。
(はぁぁ…)こんな女も居るのよね。
 柄っぱちで、戦闘員という職業が自分でも向いている、と思っている陽。たまたま訓練
学校へ行き、選ばれて――華奢でチビかと思っていたらいつの間にか天才的に頭角を現し
ていった古代進という男に出会い――そうしてまた偶然。ヤマトに乗ってその下で、共に
働いている。忘れようと思っていたし、ふねに乗ってからは、ますます遠くなる相手。
 その理由の一つが、この女性ひと――森ユキ。
……なのじゃないかと。BT隊の中で主に、2人が発展中だという噂があり、砲塔の方は、
誰もまだあんまり信用してなく、家庭持ちもぺーぺーも多い砲塔だから、BT隊みたいに
は単純に人様の恋では盛り上がれない。――でも、娯楽少ないしね、ヤマトの中は。
長崎は懸命に私の耳に入れないでおこうとしているらしい……でも。こういうことはわ
かっちゃうものだから。

 そういえば。
ふっと「サインしてね」とキーコードを渡されながら、それに書き込む陽にユキが言った。
「鎌坂さんて……古代くんや島くんと同期なんですよね」
ふっと。「え? えぇ……」そう答えるしかなく。
 どういう意味、だったんだろう?
「い、いえあのね。私はそういう戦闘の訓練とか受けていないでしょう? 基礎を少し勉
強しただけで……皆さん、すごいんですね」
そう言うユキの心理は? どういうつもりなんだろう?
 陽は自分たちが食堂で騒いでいた時、入り口付近に彼女が通りかかったのを知っていた。
(綺麗な人だなぁ……艦橋で、いつも一緒に仕事してんだよなぁ)
はぁ、とため息が出て、「大丈夫ですか?」と本気で心配されてしまった陽である。

 「――古代、ちょっと」
次の日。どうしても言っておかなければならない、と思って、格納庫付近で古代をつかまえ
た。まさか艦橋や士官室訪ねるわけにはいかない。だが古代進は比較的よく艦底や艦尾
にいるので、その気になれば、目撃情報は結構得られるのである。
 加藤三郎が「あっちにいるぜー、おい陽、大丈夫だったか、昨日?」
こいつもイイヤツでいい男だよな〜と思いながら、おう、大丈夫っ、とガッツポーズをしてみ
せて、陽は格納庫を出て艦尾へ向かう。戦闘で負傷したことを誰かから聞いたに違いな
かった。優しくて涙が出るよね、まったく。
 そうして。
「あれ? ひかり!? どうした、何かあったのか?」
明るい声で振り返った古代進は、「そういや、怪我は大丈夫か?」とこいつもそういうとこ
妙に気が回る――もっとほかのこと気ぃ回してやれっての。
 こら、古代進。
そう言って腰に手を当て、指でつんつん、と胸の真ん中を指すと、大きな疑問符をくっつ
けたような顔をしてこっちを見た。
あぁ、だめじゃん、そんなかわいー顔したら。普段とのギャップが……惚れ直してどうす
んだ、ひかり。
 えい、と思って額を寄せ、手を添えて内緒話で。
「――あたしのこと、名前呼びしない方がいいよ」
「え?」
びっくりした、という顔の古代。
そういえば、古代はわりと女性陣にも距離を置かない男だが、皆、苗字呼び捨てか苗字+
「さん」なのに、森と私のことだけ名前呼び捨てなんだな。……注意してみると、艦橋の
連中は皆、森のことはユキって……下手すりゃBT隊や上官連中も……だから、それは彼
女に限ってはコードネームってことでいいんだろうけど。
 いくら同期で、気の置けない(男同士みたいな)仲だといっても、「ひかり」は、マズイ
だろ?

 古代はきょとんとした顔で、見返した。
「――そう呼ばれるの、いやか? ずっとそうだったじゃない」
(桑野)桜、(鎌坂)ひかり。大倉は大倉だったし、遠野は名前が自分じゃ女らしくない、
とかいうから遠野だし。だからほかの女たちと君らは少し違う……。
 もう。女心のわかんない男ねっ。
 「古代――森に誤解されるよ?」
え? と急に焦る顔になる。
首筋、赤くなったの見ちゃったぞ。
 正直、私自身は、寂しい。――同期で、親しい友人。専攻も同じ、そして一緒にヤマト
に乗った。こいつに命、預けてます。
だから。南部も、古代も、私のことは「ひかり」と呼ぶ。――それが嬉しかった。けどね。
わかっちゃったんだ……。
 「女の気持ち――複雑なんだよ?」
意味深なことを囁く。
また『?』という表情の古代。……ったく。少しは悩め。

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 声が大きくなってたかもしれなかった。
「……古代、くん…」
襟首をつかんで、微妙に接近した処に、声がかぶった。
(あ、森――わ、やば)
「森――あ、べつにこれは…」「ゆ、ユキ……あ、こんにちは」
 なぁに言ってんだよ、この莫迦。
ユキは、「ごめんなさい」となんだかわからない科白を吐いて、足早に立ち去ろうとした。
「あ、ユキ――」
焦った様子の古代を見て、私はどん、とそいつを蹴飛ばした。
「早く追いかけなさいな。誤解されたよ、絶対?」
「ご、誤解って、俺は何も――」
 「古代、進っ」びし、と背を伸ばし、指差し確認っ。
「は、はいっ――な、なんだよ」
ツラれて背を伸ばし、対峙する。
「――早く、行きなさいな。……好き、なんでしょ?」「……ひかり――いや、鎌坂」
かぁっと赤くなり、言葉をなくした様子のこの男なんて初めて見る。
それだけ本気だということなんだろう。
 くすっと、そしてふんわりと、陽は笑った
。 その笑顔を見たら、惚れてなくても惚れたかもしれない、温かくて愛情に満ちた笑顔。
少し哀しそうだったけど。
 背を向けて古代は駆け出す。
「か、鎌坂――ありがとう。すまんっ、また」
「おう、言いっこなしよ。がんばんな」「おうっ」
パタパタとかけていく白地に赤いラインの後姿を見ながら、ふぅ、とため息をついて、踵
を返そうとすると。
 え?
 目の前に、立っている姿があった。

 (――長崎…)
「よう」手をひょい、とかざし、困ったような笑い顔を見せる。
「見、た、なぁ〜」
 ふざけて殴りかかろうとして……。
「おい……ひかり」
ぐ、と抱き込まれて驚いた。
「泣くなよ――偉かったよな」
え? 泣いてなんか……な、い。

 陽は自分が涙を零しているのに、そう言われて改めて気づいた。
どうして? 別に、そんなことわかっていたことだし――平気、だったのに。

 「古代が、大好きだったんだろ」
うん、……うん。
「長い、付き合いだもんな」
……うんっ。
「大丈夫だよ、お前の気持ちは伝わってるよ――」
ひくっ……うん。……。
 仕方ない――これで、失恋かな。

 (ごめん――)
なんだか、やっぱり昔からよく知っている男――男として意識したこともあんまりなかっ
た相手の胸が、やけに温かく、湿っぽかった。
ぽんぽん、と背中を叩いてくれる手が大きいなと思って……ごめん。甘えさせてもらおう。
女戦闘員一匹、これくらいでメゲるもんかっ……なんて思ったけど。
やっぱ、古代って、イイ男だもん。ぐすっ。

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= Epilogue =

 それから何週間も過ぎた帰路――艦内。

 「古代とユキって、すっかり出来あがっちゃった感じだよなぁ」
わいわいと雑談に色めく食堂から出て、鎌坂陽は、ふらりと格納庫の方へやってきた。
別段、何をしようという意識もない。
 佐々隊員が宮本といるのにすれ違う。
(あの2人もなんかいい雰囲気だよね、イスカンダル以来――山本副官とも昔から噂
あったけどなぁ?)
 美人は得ね、と思わないでもない。――まぁそれに。大砲に貼り付いて地べたはい
ずってる砲術員よりもカッコいいわよね、BT隊って。女ながらに惚れる程度には。

 あれ?
長崎が向こうにいて、すっとこちらを見つめて立ち上がったのが見えた。
――下っ端には下っ端の仕事ってのがあるんだぜ?
いつも同じ部屋にいて、役割を分担しながら撃ちまくる砲術員とは違い、BT隊はすっ
飛んでいってなんぼ……この間は、肝が冷えたけど。でも、一緒に生き残ったよね。
するりと近づいてくる彼に、綺麗な笑顔を向けた陽である。

 「どうした? 暇なの?」
「いいや」と首を振る――忙しくなった。お前がいたから。
探していたんだ。そうも言う。
 「なぁに?」
「お前、もう大丈夫か?……」
「古代のこと?」
 そう言い返しながらも、名前を口に乗せると胸が少し痛む。
やっぱり艦橋から降ってくる声を聞くとドキンと跳ねる。……それに帰路、艦長代理と
してますます重責をものにしていっている彼を見ると、喜ばしく誇りに思うと同時に、少
し寂しい。その横にはいつも森の姿があるような気がして…。
 あぁ、と長崎は頷いて。
それでも、いつも穏やかに包み込んでいる瞳が、その日はなんだか鋭かった。

 「平気だよ――もう。だって、あれ、見てるだろ?」
遠くにだが、2人が歩いている姿が見えた。特にべたつくわけではないが……通い合うも
の、それがわからない仲間たちではない。
「本当だ……だから、もう心配しないで」
 それを聞くと、彼は困ったような顔をした。
嘘だろ? 平気なわけがない。
平気だってば……そう言って、いつかのように胸の中に包まれていた。
 嘘つきな唇に……
そう微かに囁く声が聞こえたと思うと、柔らかい息がかかった。なんだか泣きたくなるく
らい懐かしい感触に包まれて。
――優しい罰を
そう、異様に気障キザな科白が聞こえたかと思うと、唇が触れ、そしてそれはけっして
イヤではなかったのだ。

 女戦闘員。色事は苦手――男だって投げ飛ばします、の彼女だが。
ひょろりとして戦いなんて向かなそうな――だが鋭さだけは一級の戦闘機乗り・長崎浩。
そんな相手に、いいようにされているなんて、ね。
 優しい、柔らかな心に包まれて。
 「――あんた、私のこと好きなの?」
「あぁ…」
深い瞳が見つめている。
「――いつでも、ずっと、好きだった」
古代とのことにつけこむような真似、したくなかったから、ずっと。黙っていたんだ。
そういう声は深くて、妙に男っぽかった。
 自分の気持ちがわからない――そんなんでも、いいのなら。
いいさ。俺が、君を好きなんだから。
きっぱりそう言うと、もう一度、ハッキリと接吻キスされた。

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 イスカンダルからの帰路――何組かのカップルが誕生している。
地球はこれから、未来へ向かって、新たな旅を始めなければならないのだ。
戦闘員――鎌坂陽、20歳。戦闘機隊員――長崎浩、19歳。
西暦2200年。――2人の未来は、ヤマトと共に、この旅の終わる先にある。

Fin
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――A.D.2199-2200年 into the YAMATO
綾乃
Count010−−02 June, 2009


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背景画像 by「Blue Moon」様

Copyright ©  Neumond,2005-09./Ayano FUJIWARA All rights reserved.


★TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』をベースにした二次創作(同人)です。
★この御題は、*月の咲く空*様からお借りしています。

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